Blue Signal
November 2004 vol.98 
特集
駅の風景
食歳時記
鉄道に生きる
陶芸のふるさと
鉄道に生きる【松田 圭司[まつだけいじ](43)京都支社 運輸車両課】
時間通りの列車運行とスムーズな乗り継ぎなど、
世界に誇る正確で緻密な輸送サービス。
鉄道輸送を支える列車ダイヤづくりのプロを訪ねた。
磨きをかけてより輝くダイヤに
秒単位で列車の運行を記した設計図
10月16日、秋のダイヤ改正が行われた。

朝夕の通勤時の特急列車や新快速の増発、所要時間の短縮、特急停車駅の拡大など、利便性と快適性を追求したものだが、ダイヤ改正に当たっては「スジ屋」と呼ばれるダイヤづくりのプロたちの技が必要となる。

列車ダイヤとは、列車の運行計画を一枚の図に表したもので、時刻や駅などが記された図表の上に列車の走行状態を「列車線」という斜線で書き記し、駅での発車時刻や使用するホームなどが一目でわかる列車運行の設計図のことをさす。この斜線の列車線のことを俗に「スジ」という。

松田圭司は、運転士の経験を活かした“列車の運行現場を知るスジ屋”として、京都支社でダイヤ改正を担当する。

「たとえば、列車の運転台の位置によって乗務員の交代に必要な時間も変わります。そんなところまで計算してスジを引きますから、現場の経験は貴重です」と松田。ダイヤの緻密さを知る一例だろう。
お客様の声を最大限に活かすため
ダイヤ改正は、JRグループ全体で一斉に行うものと、JR西日本管内で行うものとの2通りある。いずれにしても、グループ会社との乗り入れや接続なども考慮に入れてダイヤを組み立てなければならない点は変わらない。

「新型車両の導入によるスピードアップや線路の複線化など、施設設備の充実による輸送サービス向上の効果を発揮するダイヤをつくりあげるのがダイヤ改正です。新しい車両がデビューしたら直ぐに効果を出したいですしね」と松田が語るように、管内でのダイヤ改正は臨機応変に行われる。そのため、年2回という年もあれば4回という年もある。その基本は、お客様のためのサービス向上だ。

「お客様からのご要望にいかに応え、みなさんにご満足いただけるダイヤをつくるかが最大のポイントです。お客様にとって従来より不便になってしまってはダイヤ改正は成り立ちませんから。アンケートやキク象ボックスにお寄せいただいたご意見などを分析してダイヤ改正に当たっています」と松田。特急や新快速と普通列車との接続や乗り継ぎなどにも細心の注意を払う。
ダイヤ運用の検証も大切な業務
列車のスピード、待避線の有無、駅ごとの乗降時間、接続の利便性、乗務員の交代…など、ダイヤを組み立てる際に考慮しなければならない点は数多く、これらのどれが欠けても、実際には運用できないダイヤということになる。

「ダイヤの運用に当たっては、スジを引く担当者が現場に出てホームに立ったり乗車したりと、ダイヤの検証を行います。通勤時の乗降時間調査なども重要な仕事です。駅社員や運転士とのコミュニケーションも大切です。私たちの力だけでは、ダイヤは完成しません」と松田。「最初のダイヤは原石。みんなで磨きをかけて本物のダイヤにしていくんですよ」との一言に、ダイヤに輝きを与えるプロのスジ屋の誇りが見えた。
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ダイヤにスジを引くのは技術者の手作業。コンピュータプログラムでは計りきれない要素をスジ屋の頭脳が組み立てていく。
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縦軸に時刻、横軸に駅名が刻まれた図表に列車の走行状態を示す斜線(列車線)が引かれたダイヤ。過密時間帯には複雑に列車線が絡み合う。
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できあがったダイヤをコンピュータに入力し輸送計画システムを構築中。これにより電車区、車掌区ごとの乗務員、駅員用の時刻表がプリントアウトできる予定。
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駅での当たり前の風景のうしろには、緻密なダイヤが。
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