ハレの日の食膳 亥の子餅

亥の子は「うりぼう」とも呼ばれ、餅の表面に焼きごてで3本の筋を入れて模様を模すなど、亥の子餅の形・色・材料はさまざまだ。

 中国にこんな古い言い伝えがある。旧暦の10月にあたる亥の月、亥の日、亥の刻(午後10時頃)に餅を食べると病気をしない。「亥の子の祝い」だ。

 日本では無病息災を願い、「亥の子餅」を食べるという風習が平安時代の宮中行事「御亥猪[おげんちょ]」により始まったとされている。亥とは猪のことで、多産な猪にあやかり子孫繁栄を願う意味もあったという。

 紫式部の『源氏物語』にも登場する亥の子餅は、新米とその年に収穫した大豆、小豆、ささげ(大角豆)、ごま、栗、柿、糖(あめ)の7種の粉を混ぜてつきあげた餅で、色や形は亥の子をモチーフにしている。

 また、亥は五行思想で「水」にあたり、火の災いを避ける意味で亥の月、亥の日に囲炉裏や炬燵[こたつ]を開き、火鉢を出すという習わしがある。茶の湯でも「炉開き」の日として、茶席では亥の子餅が供される。

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