福田  光芳(55) ふくだ みつよし 福知山電気区 豊岡管理室 助役(管理室長)

経験にもとづく視点で、電気設備の保安を担う

鉄道に生きる

駅構内の照明を管理する『自動点滅基盤』を若手とチェック。自身の経験から見落としやすい箇所を伝え、教え込む。

現場第一で、設備の状態を見極める

 山陰本線の和田山駅から東浜駅まで、19駅85キロメートルにわたる電気設備を管理している福知山電気区 豊岡管理室。電気設備は、電車に電気を送るための電車線や信号・通信システム、変電設備など、列車の運行に不可欠であり、担当エリアを管理する社員たちは、安全安定輸送の実現に向けて不断の努力を続けている。

「現場に足を運んで、電気設備の状態をつぶさに観察すること。さらに、現場にどのようなリスクが存在しているのか探し出すのも設備管理の大事な仕事です。また、どんな状況の中でも、いざ故障が発生すれば早期復旧を念頭に、管理室の全員が協力します」。 そう語るのは豊岡管理室の7人を率いる福田室長。

 豊岡管理室が担う区間は、約半分が日本海に面するため、冬の風雪をはじめ、年間を通して塩害や落雷などによる突発的な被害が起こりやすい。また、ツル草や樹木による設備への支障など、ローカル線ならではの、自然と向き合いながらの設備管理が求められる。

「夏でも冬でも雷が発生すると、事故や故障が発生しないように願うばかりです。それくらい落雷が多いエリアです」。当然、予測される被害を前にただ手をこまねいているわけではない。いかに被害を避け、安全安定輸送を実現するか、それこそが設備管理に求められる第一義である。

現場に出る前のミーティングでは、電力、通信、信号など各系統の担当者と、注意点を明確に共有する。

注意すべきポイントを明確にしておく

 たとえば落雷による被害を減らすために、福知山支社では架空地線と呼ばれる、電車線を落雷から保護する設備の工事を進めている。このほか、さまざまな検査や工事が日夜行われているが、現場監督や協力会社の担当者に対して、“注意すべきポイントを明確にする”のが自分の仕事であると福田は言う。

「どんな検査や工事でも注意するべきことが必ずあります。電気を扱う以上、感電や墜落、そして触車、また人為的に起こりやすいミスなど、大きな工事でも、小さな修理でも、経験から学んだ注意ポイントがあるのです。それを明確にしておくことが指揮を執るベテランの責任でもあります」。

 検査や修繕工事の計画策定や準備だけではない。設備管理を担う社員は夜間や日中を問わず、駅や指令から呼び出しがあれば現場に急行することもある。

「故障発生の連絡を受けた時は、想定される原因を思い浮かべながら現場に向かいます。24時間いつでも呼び出される覚悟はできています」。

 今でも思い出されるのは、自宅で正月の準備をしていた大晦日の午後。指令から現場確認の要請を受けた福田は車で現場に直行。現場へ移動中の車内で新年を迎え、想定外の大雪により被害を受けた電気設備の復旧作業に従事し、そのまま二晩を雪の降る現場で過ごした。

「とても寒い思いをしました。しかし、自分の前に故障があれば、一刻も早く復旧にあたるのが設備管理の使命です。私だけでなく、設備に関わる全員が同じ思いを持っています」。

故障や不具合が発生した場合、原因と対応策を関係者へ周知する。説明は具体的に分かりやすく行うのが信条。

“継承”と“共有”で、若手を育成する

 福知山電気区では、現在、平均年齢34歳と社員の若返りが大幅に進んでいる。福田率いる豊岡管理室でも20代の社員が中心であり、30代は中堅として後輩の指導にあたっている。

「現在の若手は、自分の若い頃と比べてとても優秀ですし、勉強熱心で、責任感も強い」。そう笑顔で語る福田だが、若手が業務を担うからこそ、指導するベテランの責任は重いと考えている。

「自分たちベテラン世代は、若手に対して過去の事例と、現在の取り組みをちゃんと伝えること。それが大事です」。

 過去の事例とは、事故や故障がどのように発生し、どのように対処したのか、いわば記憶の継承だ。現在の取り組みとは、安全安定輸送の実現をはじめ、電気区における行動指針や目標の徹底など、いわば意識の共有である。継承と共有、この両軸をもって福田をはじめベテランたちは将来を担う若手を未来へと導いている。

「地域と共に生きて、地域のことに精通しつつ、安全への強い思いを持つ技術者を育成したい」。それがこれまで厳しい状況と向き合い続けてきたエキスパートの願いだ。

ミーティングなどに使う資料の作成は、各担当間の情報共有化のための重要な作業だ。

ページトップに戻る
ローカルナビゲーションをとばしてフッターへ