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輝く匠

安全・安心を支える技術(第41回)

近畿統括本部 施設課 縄田 英俊 課長代理

1995年入社。阪神・淡路大震災の復旧工事に追われる神戸建築区で鉄道における建築の基礎を学び、神戸支社 施設課を経て開発本部 事業創造本部で駅ナカ保育事業の運営に携わる。その後京都建築区で近畿エリアの駅の橋上化を担い、2017年6月から現職。
 

「駅をリニューアルして、お客様の『きれいになった、便利になった』と喜びの声や、駅の方の『仕事がしやすくなった』といった声を聞くと、この仕事をしていて本当に良かったと思います」と語るのは、近畿統括本部 施設課の縄田 英俊 課長代理。当社、グループ会社、協力会社をはじめ多くの関係者の思いを一つにして、末永く愛される駅づくりに取り組む匠を訪ねた。

駅ナカ保育事業を通じて学んだ協力の大切さ

縄田は阪神・淡路大震災が発生した1995年に入社。配属されたのは神戸建築区で、ベテラン社員は駅舎などの復旧工事に奔走しており、その他の通常の修繕工事は若手社員が担当していた。ベテラン社員は多忙ながらも熱く指導し、縄田は建築の基礎をはじめ多くのことを学んでいった。

転機が訪れたのはその後に配属された神戸支社 施設課で駅設備を担当していた時だった。当時、駅に強盗が入る被害が発生しており、縄田は支社管内の全駅を回って防犯強化対策に取り組むとともに、バリアフリーの取り組みとして各駅のエレベータ設置計画を担当していた。計画を進める中、当社の駅には授乳室など、ファミリー層向けの設備が不足していることに気が付いた。縄田は「さまざまなお客様に快適にご利用いただける設備が当社には足りない」と一念発起、社内ベンチャー制度に応募し駅ナカ保育事業の「JRキッズルーム」を開業した。

「キッズルームの開業を通じて学んだことはたくさんあります。その1つが、仲間と協力し合うことの大切さです。保育事業は誰も経験がなく、何から始めればよいかも分からずまさに手探り状態でしたが、仲間で知恵を出し合いながら一つひとつ歩みを進めました。一人でできることは限られていますが、互いが長所を活かしフォローし合うことで困難も、より大きな仕事も乗り越えられることを学びました」。

自分は主役ではない

その後京都建築区に異動となり、駅の橋上化プロジェクトを担当する。建築業務を離れている間に規程やマニュアルなどルールが変更されており、縄田にとってこれまでの知識、経験では対応しきれない事柄が多く待ち受けていた。そこで縄田は自らの知識を更新する傍ら、仲間の長所をいち早く理解しそれぞれに適した仕事を割り振り、組織として最大限に力が発揮できる環境を整えた。「私よりも優れた技術を持った人はたくさんいますので、私は組織として成果を挙げられる環境づくりを第一に考えました。

こちらから積極的にコミュニケーションを取ることでその人の得意分野や、業務の進捗、悩みも分かります」。会話の中で、縄田が学ぶことも多い。「固定観念にとらわれない斬新なアイデアなど、若手から気付かされたこともあります」。縄田のつくり出す雰囲気が、より良い仕事につながっている。

傾聴の姿勢が築く信頼

縄田はこれまで篠原駅、稲枝駅、三雲駅の橋上化プロジェクトに携わり、最近では膳所駅の橋上化に取り組んだ。「膳所駅もそうでしたが琵琶湖周辺は地層が複雑で、杭打ちの際に地盤が固い箇所を特定するのに苦労しました。また、曲線のホームのため見通しが悪く、仮囲いを設置するにもお客様の視界を妨げないように気を配りました。安全は最優先事項ですから、必ず自分の目で現場を見るようにしています」。関係者と会話を重ね、安全で快適な駅をつくるためにはどうすればよいか、仲間の話にしっかりと耳を傾けて最善を探る。その熱心な姿勢ゆえに、現場、グループ会社、協力会社からの信頼も厚い。

現在縄田は、近畿エリアの駅の橋上化、バリアフリー化、耐震工事などプロジェクト工事の計画策定や自治体との協議を担っている。多くの関係者が関わるため、思いを一つにまとめ上げるのにいつも心を砕いているという。縄田が心掛けるのは、相手の立場に立って考えることだ。「話をする時にはそこに至るまでの思いや背景があるはずです。まずは相手の思いを聞き、尊重した上で自分の思いを伝えないと、相手との距離が縮まらないと思います」と対話の大切さを語る。関係者が多い分苦労も多 いが、完成してお客様が駅を見てうれしそうに話をする時、縄田は仲間たちと喜びを分かち合う。

卓越した技術で輝く匠がたくさんいる中で、縄田は仲間が最も力を発揮できる環境をつくり、成果を出せる匠なのだ。

失敗談を聞かせてください。

神戸建築区でトイレの改修工事の設計を担当している時、先輩から「タイルはコーナーが欠けないように見切り材を設置した方がよい」と助言をもらったのですが、タイルだけの美しさにこだわったゆえにその助言を素直に受け入れられなかったことがありました。すると案の定お客様の荷物などが当たりタイルが欠けてしまい、かえって汚くなってしまいました。現在では、見切り材を設置することが標準仕様となっていますが、助言をもらった時、その背景を考えていれば、竹割タイルの使用など、また違った対応をしていたように思います。

※部材同士が接触する部分に仕上げとして設ける部材。

駅ナカ保育事業を通じてほかに学んだことを1つ聞かせてください。

仕事は自己満足で終わらせてはならない、ということです。建築の仕事だけをしていた時は、建物が完成した時点で「いいものができた」と満足していました。一方駅ナカ保育事業時代に、自分が考えた施策がなかなか利用者増に結びつかなかったことがありました。これを通じて、本当に大切なのはお客様に受け入れていただけるかどうかであることに気付きました。駅のレイアウトなどを考える際に、多面的に考える習慣がつきました。

社員へのメッセージをお願いします。

自系統以外の仕事に関心を持ってほしいと思います。例えば建築関係であれば、駅を工事する際、駅の仕事や混雑する時間帯を知っていれば、より安全でお客様や駅係員の皆さんに使いやすい設備の提案につながると思います。さまざまな系統の仕事を俯ふ瞰かんして、自系統にその経験を持ち帰ってより良い成果につなげていってほしいと思います。

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