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輝く匠

安全・安心を支える技術(第34回)

福知山車掌区 新治 靖弘 専門主任車掌

昭和51年国鉄入社。駅での出札などの業務を10年以上経て、平成3年に福知山車掌区で車掌となる。平成23年から現職。今も現役車掌としてその手腕を発揮しているほか、専門主任車掌として車掌見習いの指導や教育を行っている。
 

 「ご乗車ありがとうございます。ただいまから、きっぷを拝見させていただきます」 ─ 城崎温泉駅へと向かう特急に乗車してほどなくすると、車内改札のご案内が耳に届いてきた。はっきりとして落ち着きのある声で、聞く人に安心感を与えてくれる。その声の主こそ、今回の主役、新治である。

安全を確保するために、基本動作の根拠を徹底的に考えさせる

新治は現在、専門主任車掌として現役の車掌業務のほか、若手車掌や車掌見習いの指導・教育なども行っている。彼が指導・教育で重要視しているのは、「基本動作を徹底すること」だ。「ヒューマンエラー防止の根幹は、基本動作にあります。しかし、ただやるだけでは効果がありません。例えば『信号よし!』と指差喚呼した時、何を根拠に『よし』としたのか。その根拠を持っていなければ、指差喚呼していないのと同じです」。

そこで新治は、若手車掌や車掌見習いが乗務する列車に添乗した際に、基本動作のタイミングや視線、指差し位置などを見極めて、判断が怪しいと思った時にはその根拠を徹底的に問いかけて確認している。そうすることで、指導を受けた車掌らが自ずと基本動作を徹底するように促しているのだ。

お客様に「快適な車内空間を提供する」という思いを持つ車掌を育てたい

安全の確保はもちろん、お客様の旅のご案内を行うことも車掌の重要な役割である。ここでも、新治の矜持きょうじが垣間見える。「私が指導を行っている少年野球では、『礼に始まり礼に終わる』を基本に掲げています。これは、あらゆる仕事に通じることだと思います。私は乗務の際、お客様に敬意を持ち、お客様の立場に立つように心掛けています。特に、車内放送や車内改札前後のご案内においては、マニュアル通りの行動だけでなく、状況に応じてプラスアルファの声掛けなどを実践しています」と語ってくれた。新治は、後輩にこの思いを継承してほしいと考えている。「例えば車内放送は、慣れてくると早口になってしまいがちです。添乗した時には、『快適な車内空間を提供する』という思いを込めて放送するように指導しています」。

駅時代に習得した営業知識が、車掌業務の基礎になっている

今でこそ匠として活躍する新治だが、初めから何でもできていたわけではない。ここに至るまでに弛まぬ努力を続けてきた。新治は、現在の車掌業務の基礎として、特に「駅時代に習得した営業知識」を挙げた。「私は10年以上、駅のみどりの窓口で出札などの仕事を行っていました。昔は運賃計算などを手作業で行っていたので、今と比べると作業風景もずいぶんと様変わりしていますが、営業制度自体はほとんど変わっていません。必死で根拠を覚えた営業知識は、車掌となった今でも自分を支えてくれています」。

根拠と経験は財産

次代を担う若手社員に伝えたいこととして、「積極的に経験を積んでほしい」と語る新治。その真意を問うと、「先ほど述べた駅時代の営業知識もそうですが、根拠と蓄えた経験は仕事をするうえで大きな財産となります。異常時への対処なども、経験を積むにつれ上手くなっていくものです。私も、平成7年の阪神・淡路大震災の直後に福知山エリアの迂回輸送を担当した時は、普段では考えられないほどのお客様がご乗車され、安全に目的地にお運びできるか不安でした。まずは深呼吸して落ち着いて、いつも以上に基本動作に緊張感を持ちながら乗務したことを今でも覚えています」と語った。

そして、最後に「若手車掌の成長こそが区のレベルアップにつながります。私も次代を担う、思いを持った車掌が一人でも多く育つよう、彼ら、彼女らが根拠を学び良い経験を積む手助けをしていきたいと思います」と、未来を見据えた眼差しで述べた。

  • 指差喚呼を見守る匠。視線や動作を見極めている。
  • 車内放送の様子。「快適な車内空間を提供する」という思いを込めて、丁寧に放送する。

未来の匠

今和泉 潤也

新治専門主任車掌は、豊富な経験と優れた知識・技能をお持ちで、乗務時は自らが模範となり確実な基本動作を実行されています。安全に対するこだわりが強く、時には厳しく指導されることもありますが、普段は優しく、若手車掌とのコミュニケーションを大切にされており、どんな意見にも耳を傾け的確なアドバイスをしていただけます。仕事も野球も一流の新治専門主任車掌を目標に、私も努力を重ねて将来は「匠」と呼んでもらえるような鉄道人を目指していきます。

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