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輝く匠

安全・安心を支える技術(第32回)

山陽新幹線と九州新幹線との境界の地で、信号通信設備の保守管理を一手に担う専門家(博多新幹線電気区 松野 登 係長)

博多新幹線電気区 松野 登 係長

匠プロフィール
昭和51年国鉄入社。入社以降長らく、広島エリアで在来線の信号通信設備の保守管理を担ってきた。平成21年には大阪電気工事事務所 博多新幹線電気工事所に着任し、山陽・九州新幹線の相互直通運転のための電気設備工事を行う。平成23年から現職。前職で自ら更新・新設した設備を保守管理しながら、後進の育成を行っている。
 

平成23年3月に山陽・九州新幹線の相互直通運転を開始してからおよそ5年。その境界となる博多の地に、当時「山陽新幹線」と「九州新幹線」を直通させるための電気設備工事を担い、現在はその安全・安定輸送を実現すべく設備の保守管理を行っている男がいる。それが博多新幹線電気区の係長、松野である。

若手社員には現場を「観て」学習させるとともに、工事のあるべき姿を追求させる

松野は現在、信号通信設備を保守するための修繕工事の設計や施工会社との契約業務に携わる「信通管理グループ」を束ねている。若手社員への教育も、松野の仕事だ。「工事設計は、設備を把握しなければ始まりません。まずは、現場を『観る』ことが必要です」。そう語る松野は、現場設備の調査に強いこだわりを見せる。「夜間の作業時間帯に若手社員を連れて現場の調査をして回るように心掛けています。そうやって若手社員に管区内の設備全てを自分の目で『観て』学習させることで、精度の高い工事設計ができるように仕向けているのです」。

松野はまた、自分自身で「工事のあるべき姿」を追求しながら施工手順を考えるように若手社員を指導している。「工事書類を作成する時、過去に実施したことのある同種工事の資料を参照することがよくあります。しかし、よく理解しないまま安易に参照すると、例えば万が一、元の資料が間違っていた場合に同じ間違いを繰り返してしまいます。そうならないためにも、基本構想をしっかり検討し、整理しながら進めていくように教えています」。

自ら進んで「新幹線」の道に進んだが、当初は苦労の連続だった

今や博多地区における新幹線の信号通信設備保守のキーマンとなっている松野だが、入社してからの33年間は、広島地区の在来線一筋であった。転機となったのは、平成21年6月。自ら手を挙げて、山陽・九州新幹線の相互直通運転のための電気設備工事を担う部署に赴いた。とはいえ、決して順風満帆であったわけではない。「赴任するまでは、在来線・新幹線と分かれてはいるけれども、設備や管理方法に大した違いはないだろうと高をくくっていました。ところが、いざ仕事を行ってみると、これまでの在来線での知識がほとんど役に立たず、また、土地勘もないために大いに戸惑いました」。それでも、松野らしく現場をつぶさに観て回ることで、これまでに例を見ない大工事をなんとかやり遂げた。

ここで、あらためて感じたことがある。それは、「人間関係の重要性」だ。松野は言う。「業務で悩んだり、困ったりした時に、職場の上司や仲間がフォローしてくれました。本当に助かりましたし、感謝の気持ちは今でも消えることはありません。自分が今新幹線の仕事を行えるのも、周りの方々の助けがあってのことです」。

人とのつながりを大切にしながら、チームで仕事をしていきたい

松野は、若手社員に伝えたいこととして静かにこう語った。「大きな仕事をする、あるいは大きく物事を進めるにあたって、自分一人でできることなんて限られています。分からないことがあれば自分で調べるなり行動し、それでも分からない時は、上司や先輩に聞けば良いのです。一人で悩まずに、チームで仕事をしていけばきっと良い成果を生み出すことができます」。「そのためにも…」と続ける松野は「今後も、人とのつながりを大切にしながら、皆と目的や目標を共有してチーム一丸となって仕事を進めていきたいと思います」と、その決意を力強く述べた。

  • ミーティングを通してチームの相互理解を深める。
  • 若手社員の作成資料に目を通す松野。間違いがないか入念にチェックする。

未来の匠

櫻井 花香

松野係長は卓越した技術・知識と気さくな人柄で、ベテランのみならず若手社員からの信頼も厚い、人望のある方です。若手社員の育成にも力を入れられており、私も現在、係長の指導で工事設計などの新しい業務に取り組んでいます。どんな些細な質問でも「なぜそうなるのか」という根拠から丁寧に教えてくださるので、意欲的に仕事に取り組むことができます。私は入社2年目で、今は頼りないですが、さまざまな業務を経験することで、松野係長のような人望の厚い技術者になれるよう努力していきます。

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