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輝く匠

安全・安心を支える技術(第29回)

駅運転の技能を次世代に引き継ぐ「チーム匠」の大黒柱(福知山支社 営業課 駅運転統括チーム 中奥 和之 チーム長)

福知山支社 営業課 駅運転統括チーム 中奥 和之 チーム長

匠プロフィール
昭和56年国鉄入社。入社後は、豊岡駅などで操車や運転関係の業務に従事。その後、王寺駅での営業、新大阪総合指令所での指令業務を経て、平成17年に綾部駅長。西舞鶴駅の営業助役を務めた後、平成24年から福知山支社営業課で駅運転指導監となり、平成26年10月の駅運転統括チーム発足とともに、初代チーム長に就任。
 

運転取扱いを指令所で行うCTC(Centralized Traffic Control)化が進み、駅での運転取扱い業務の技能継承が難しくなりつつある。そこで平成26年10月、駅での運転取扱い技能の維持・向上を目的として、和歌山、福知山、米子、広島の各支社で「駅運転統括チーム」(チーム匠)が発足した。このうち福知山支社のチーム長を務めるのが中奥だ。

良いところをほめ、伝わったかを確認する指導術

中奥は現在、現場を巡回しての指導や教育のほか、若手社員に駅運転特有の技能を継承するための各種研修、訓練内容の監修などを行っている。

この日は、運転取扱いを行う駅のリーダーたちを集めた研修。参加者のほとんどが、中奥から見て一回りも二回りも年齢が下の者たちだ。「ただでさえ年が離れているので、指導の際にいきなり悪い点を指摘してしまうと、相手が委縮してしまいます。そこでまずは良い点をほめて、その後に直してほしいところを言うようにしています」。

また、相手が本当に理解しているかどうか、何度も確認する。例えば、研修の冒頭で最近の駅運転関係のトラブル事例について解説した後、参加者に「今言ったこと、分かった?」と質問する。「分かりました」と答えると、「じゃあ、どういうことだったか説明してみて」と重ねて尋ねる。そうやって、相手が本当に理解しているかを見極めるのだ。

失敗して「確認の大切さ」を知った指令員時代

中奥が確認を重視するようになったのは、30代半ば、旧新大阪総合指令所(現 大阪総合指令所)での経験からだという。「当時は輸送指令として、毎日のように運転整理を行っていました。とある異常時で、駅係員に対して列車順序を伝達した際、私は『A列車の後にB列車が来る』と伝えたつもりでしたが、駅係員は『B列車の後にA列車が来る』と認識してしまいました。その結果、お客様に誤った情報が伝わり、ご迷惑をお掛けしてしまいました」。

こういった失敗談は、駅運転統括チームの若手社員に直接語るようにしているという。「なぜ失敗したのか、反省すべきポイントを伝えることで、必ずしなければならないこと、絶対してはならないことを引き継いでいきたいと思います」。

自信を持って異常時に臨める社員を増やしたい

運転取扱いで最も大事なことは、「安全を第一」に、基本動作を確実に行うことだという中奥。「異常時の運転取扱いに不安を覚える社員が少なくありません。確かに、一つの流れとして取り扱うことができる通常時とは異なり、異常時はその都度異なる状況下での対応が求められます。ただ、通常時も異常時も、基本動作の積み重ねなのです。基本動作一つひとつについて、『なぜそうするのか』という理屈が分かっていれば、決して難しいことではありません」と語る。さらに、「知識、技能は簡単に向上するものではありません。でも、1日に一つのことを覚えれば、1年で365の物事が覚えられるのです。焦らず、しっかりと考えて取り組んでいけば、おのずとレベルアップしていくことができます」と若手にメッセージを送る。

「駅運転統括チーム」が発足して半年。自信を持って異常時に臨める社員を増やしたいという中奥の挑戦は、これから佳境に入っていく。

  • 駅運転統括チーム長のワッペン。
  • 研修の前には担当者で集まって準備を徹底する。

未来の匠

古川 武司

中奥チーム長は、大変優しい方で、よく私の相談に乗っていただいています。その際、私の意見を全否定するのではなく、その意見の良い部分を見いだし、生かす道筋を一緒になって考えてくれます。私も中奥チーム長のように知識・技能を習得していきたいと思います。そして、駅運転統括チームとして後輩社員にしっかりと指導をしていきたいです。

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