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輝く匠

安全・安心を支える技術(第23回)

あらゆる視点から車両を検査し輸送品質を高める(広島支社 下関総合車両所 高端 渉 品質管理センター長)

広島支社 下関総合車両所 高端 渉 品質管理センター長

匠プロフィール
昭和50年国鉄入社。幡生工場(現 下関総合車両所)で工作技術係として、車両の主制御器やモーターなどの電気機器の検査修繕に従事。その後、出場検査や構内での試運転など、営業運転前の最終チェックの担当を経て、平成21年より現職。その間、平成9年には電気機関車の全般検査開始にあたり、検査体制の立ち上げに尽力した。現在は、豊富な経験と知識を生かし、安全・安定輸送に貢献するとともに、その継承にも力を入れている。
 

最適解を求めて一呼吸おく

「一呼吸おいて考えろ」。下関総合車両所で、検修が終わった車両の最終チェックを行う『出場検査』を担当する高端。不具合を発見するとすぐに対応しようとする若手に、一呼吸おくことの大切さを説く。「一見正しいかのように見える修繕方法であっても、車両全体への影響や乗り心地などを考えると、それが必ずしも最適とは言えないことがあります。もちろん、少しでも早く対応することは大切ですが、一旦冷静になってあらゆる視点から最適なやり方を考えることを忘れてはいけません」。

「使う」側の視点から考えることの大切さ

高端のキャリアは、電車の主制御器の修繕担当からスタートした。「当時は、詳しいテキストなどなかったので、見よう見まねで技術を身に付けていきました。同じことを繰り返し質問するわけにはいかないので、教えてもらったことや気付いたことは懸命にメモしました」。何冊にも積み上がったノートは、今もなお彼のバイブルだ。

こうした努力を続けた結果、担当する機器は主制御器以外にも広がっていき、やがて、出場検査の担当に。この時、高端は初めて車両を『使う』側を意識するようになる。

「送り出した車両を運転士がどのように操作するのか。それを知らないと、どんなに一生懸命に検修しても、検修担当の独り善がりになってしまう」。そう感じた高端は、構内での試運転を行う限定運転士の免許を取得。「ブレーキの設定値一つにしても、実際に運転すると想定以上にブレーキが利き過ぎて運転しにくいこともありました。自分で運転することによって運転士の視点を知ることができましたし、運転法規を学んだことで、それまでなぜそう取り扱うのか分からなかったことなど、さまざまな疑問が解けました」。

さらに、もう一つの『使う』側視点も意識するようになった。お客様視点だ。「以前は、どちらかというと、車両を修理・検査する側の視点で仕事をしていたように思います。しかし、出場検査という、車両所の中で一番お客様に近い業務を担当するようになってからは、『お客様のために』という意識がそれまで以上に強くなりました。若手には『自分が乗っている列車が車両トラブルで30分止まったらどう思うか』常に言い聞かせています」。

運転士とお客様。車両を『使う』側の視点を持ったことで、高端は、車両検修担当として大きくステップアップできたのだ。

『自分の愛車』と同じように

現在は、発生した不具合の修繕に加え、不具合の発生自体を未然に防ぐことにも取り組んでいる。不具合が発生する『可能性』を想定した上で事前に対策を練るというプロセスは、発生した『事実』をもとに対策を練ることとは比較にならないくらい難しい。「確かに大変です。でも、最高の状態で車両を送り出すことが私の使命です。積み重ねた経験をもとに、これまで以上に多様な視点で車両を見つめることで、これからも最適解を探し続けていきたいと思っています。若手にも、『これくらいでいいだろう』と安易に妥協せず、自分の愛車に対するのと同じように、徹底的に検査し、考えるよう指導しています」。

こう語る高端。車両の品質を守る最後の砦として、今日も厳しいチェックの目を光らせる。

  • 車両不具合の情報はメールなどで即座に伝わり、共有化される。
  • 若手社員へ回路の仕組みを解説する。
  • 部下からの報告には、違った角度からの質問を投げかけ、考えさせることにこだわっている。

未来の匠

大江 拓 / 村田 勝俊

高端センター長は、物事を憶測で判断せず、現地や現物を自分の目で見て、納得した上で判断される方です。そこには自分の「車」を保守するという強い思いがあり、ルールの見直しや改善一つにしても妥協せず納得するまで実行する、その姿勢は大変勉強になります。私たちも高端センター長のように「検修人としてのこだわり」を持ち、勘所や五感を養っていきたいと思います。

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