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輝く匠

安全・安心を支える技術(第18回)

仲間との連携を大切に列車を走らせる(金沢支社 北陸広域鉄道部 運輸科 堀下 順一 運転士)

金沢支社 富山地域鉄道部 富山運転センター 堀下 順一 運転士

匠プロフィール
昭和55年国鉄入社。高岡保線区(現 北陸広域鉄道部 高岡管理室)で保線業務に携わったのち、高岡機関区(現 北陸広域鉄道部 高岡運転派出)で車両の入れ換え作業に従事しながら、機関士を目指す。その後、機関助士になった矢先に国鉄分割民営化を迎え、売店や車両の検査修繕、喫茶店、駅、車掌などさまざまな職種を経験する。その後、念願かなって平成3年に福井運転区(現 福井地域鉄道部 福井運転センター)で運転士になり、以来、「トワイライトエクスプレス」「はくたか」など北陸線の列車を中心に乗務している。自らの運転技能はもちろん、指導力にも定評があり、これまでに区所初の女性運転士を含め9人の運転士を育てている。
 

「鉄道は駅や車両検修、保線、車掌など多くの系統の人たちの尽力と連携で安全が保たれています。だからこそ、運転士がミスをして仲間が築き上げた安全を台無しにはできない」。穏やかな表情で、しかし熱くそう語る堀下。これまで9名もの運転士を育て上げた「名親方」だ。

運転士魂とは

堀下は「運転士魂」についてこう語る。「運転士は一人で列車を操縦する責任の重い仕事です。しかし、それまでの準備を他系統の仲間がしてくれている、最後は運転士。だから『最後の砦は運転士だ』という気概を持って仕事をしなければなりません。お前がやらないで誰がやるんだ!」と。堀下の「運転士魂」は、さまざまな職種のさまざまな人との出会いから生まれた賜物だ。

さまざまな仕事と人との出会い

元々機関士になりたいという思いで国鉄に入社した堀下、最初は保線の仕事に携わった。その時に「職人」のすごみに驚いたという。「非常に職人気質の高い職場でした。仕事に関しては非常に厳しい先輩ばかりで、犬釘一本にもこだわりを持っていて、少しでも軽く扱うと厳しく指導されましたね。ただ、そのことで弱音を吐くことはなかったです。むしろ自分もそのような職人になりたいという憧れを持つようになりました」。

その後、機関区で機関助士となった矢先に国鉄分割民営化を迎え、JR西日本発足のころは鉄道だけでなくさまざまな業種を経験することになる。「駅の売店や喫茶店、駅員、車両検修、車掌など、多種多様でした。その中では、特に接客にも技術があることが私にとっては大きな発見でした。例えば喫茶店での『正確に注文を受けて配膳する』ことにも技術が必要で、その匠とも言える先輩から教えてもらいました。さまざまな仕事を経験した中で、さまざまな人と出会えたことは大きな財産です」。

運転士である前に

やがて車掌を経て、運転士の見習いとなった堀下だが、そこでの「先生」との出会いが今の自分の指導方法の原点であると語る。「私の先生は社会人としてのしつけ、礼儀、道徳を非常に重んじる方でした。あいさつ一つでもしなければひどく叱られました。が、一方で『君と共に勉強しよう』と、見習いである自分に目線を合わせる方でした」。「一人で仕事をする運転士には、人一倍社会人としての責任があり、高い倫理観を備えていなければならないと。先生から教わったこと、それは技術だけではなく、自分一人で運転する使命感とそれを担う人間の倫理観が高くなければならないことです」。

同じ目線で

現在、堀下はチームのリーダーとして、若手・ベテラン問わず運転士の指導的役割を果たしている。「チーム内のコミュニケーションが一番大切です。年齢、経験を問わず、相手と同じ目線で会話をする。決して上から目線ではなく。また、他の区所の運転士や他系統、グループ会社の社員でも、 同じ鉄道で働く人と出会った際には必ずあいさつをし、『お疲れ様』の気持ちを忘れない。若手にもそう指導しています。鉄道はさまざまな職種の人たちの力で成り立っているのですから、仲間に感謝しなければならないです。若手からは『堀下さんはいろんな所に知り合いがいるのですね』と驚かれますが、私からすれば、同じ鉄道を守る仲間ですから、当たり前のことです」。

これからも、運転士としての、鉄道員としての魂を後輩たちに伝えていきたいと語る堀下。ベテランと若手との橋渡し役も担いながら、鉄道の安全を守る後輩たちを育てていく。

  • 相互に敬礼し引き継ぎを行う
  • 乗務報告書を作成
  • 終了点呼では、気になった事柄も報告し、安全性向上に貢献している

未来の匠

平野 暁

堀下さんは、運転士としての知識、技能はもちろん素晴らしいのですが、大変優しい方で何でも相談に乗ってくださいます。疑問点には経験談を交えながら分かりやすく答えてくださいます。一方で、社会人としての礼儀には厳しい方で、『運転士魂』を非常に感じます。私も知識・技術はもちろん、指導操縦者としても、堀下さんのような人間的にも素晴らしい方に少しでも近づけるように頑張ります。

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