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輝く匠

安全・安心を支える技術(第17回)

自分の仕事への明確な「思い」が線路を守る(米子支社 鳥取鉄道部 倉吉工務支部 中江 豊一 助役)

米子支社 鳥取鉄道部 倉吉工務支部 中江 豊一 助役

匠プロフィール
昭和51年に国鉄入社。出雲保線区、鳥取保線区(現鳥取鉄道部)で保線業務に携わる。平成元年から平成3年まで大鉄工業鰍ノ出向し、軌道整備に従事する。平成8 年からは保線の現場から鳥取鉄道部工務科に移り設計・工事業務を担当し、山陰線・因美線高速化事業に尽力する。平成16年からは米子支社施設課で施設指令長として支社の全エリアの線路を守る役割を果たす。平成19 年に鳥取鉄道部鳥取工務支部で係長、平成23年に倉吉工務支部助役になり、現在に至る。
 

「線路は生き物です。気温や天候などの条件が変われば変化しますし、単線区間の同じ場所でも、上り列車、下り列車でそこから感じる振動は異なります」。そう語る中江。担当エリアの線路を知り尽くした、保線のエキスパートだ。

基本を理解する

鳥取で生まれ育った中江は、地元の高校を卒業後、国鉄に入社。主に山陰線の保線業務に従事した。「当時は、『見て覚えろ!』と言う先輩がほとんどでしたが唯一、刃物である『ちょうな』の扱いだけは教えてもらいました。当時も安全については今と変わらず厳しく指導されましたね。今でも、当たり前のことですが、けがだけはしないよう若手にも常に言っています」。

その後、大鉄工業に出向。ここで軌道整備の基本を身に付けた。「例えば当時、分岐器を交換する際は、古い部品を再利用していたので、使える部品かどうか見極める必要がありました。この見極める術を先輩に教えてもらう中で、分岐器の構造を基本から理解することができました。ここでの経験がその後大きく役に立ちました」。

明確な意志を持つ

1年10カ月の出向後、再び当社で保線作業に従事していたが、やがて転機が訪れる。今まで保線の現場一筋だった中江が、作業工程の作成や設計、積算、資材の発注などを担当することになったのだ。「最初はよく分からず、現場との調整も含めて、見よう見まねで何とか覚えていきました」。しかし、苦労する中で、視野が広がり、保線作業への理解が深まったという。「施工内容の検討から発注、施工、検査まで、工事の一連の流れがよく分かりました。

また、現場に作業を発注する側の思いもよく分かりました。現場で作業していた時は『なぜこの作業をするのか』と疑問を持つことがあったのですが、逆の立場に立ってみて、計画する側の思いを伝え、一方で現場の思いをどう汲み取るか、考えるようになりました」。

中江は、大切なのは「思い」だと言う。「施工させる側が現場のニーズ、思いに応えるのは大切ですが、こちらも思いを持って仕事をしなければ相手は動きません。逆に多少難しいことでも『思い』があれば応えようという気になりますし、相手もそう思います。だから、『ついでに』と物事を頼むのは好きではないです」。この「思い」を貫く姿勢はその後、施設指令や保線区と職場が変わっても、中江の原点となった。

担当エリアは自分の「家」

現在、中江は倉吉で助役として、若手の指導にあたっている。その際「自分の保守するエリアは、自分の家だと思え」と語る。「自分の家であれば、例えば雨漏りなども一生懸命直そうとします。また少しでも変なことがあれば、調べて直そうとするでしょう。保線の現場でも同じです」「私は感じて修繕することが保線には一番大切だと思います。検測車で整備を要するデータが出る前に、まず、あれっと思うこと。定例の巡回・検査での状況把握は当然ですが、通勤や出張の時でも列車の動揺などを敏感に捉え、普段と違う体感を得たら、すぐに現場へ足を運びその現場を見て感じることです。自分の家くらいの愛着、それがあれば知識や技能も自然とついてくると思います」。

これからも、若手への「思い」を持ちながら、彼らの思いにも応え、育てていくことが使命と語る。「今は、実際に自分たちで作業することが少なくなりました。だからこそ、パートナー会社が作業する現場を見て、感じることが重要になってきます。

机上だけではなく、実際の現場に行って感じたことをいかにして自分の糧とするか。若手には常に語っています。目で学ぶ、感じること、これが基本です」。

若手と仕事への思いを常に持ち、彼らの思いも受け止める中江。これからの鳥取の線路を守るべく、次代を担う若手の育成に全力を注ぐ。

  • 片手水平上げで安全を確保
  • 保守用車の整備。常に万全な状態になるように心掛ける
  • 夜間作業。線路の継ぎ目(遊間)間隔を調整する

未来の匠

生部 充敬

中江助役は、率先して現場に立ち、皆をリードしてくださる、とても頼れる存在です。作業現場での要領を得たアドバイスはとても参考になります。また、検査実施責任者として検査の勘所、補修に至るまでの流れを時に厳しく、時に優しく指導してくださいます。
中江助役の保線業務に関する知識、卓越した技術力は私の目標であり、将来中江助役を超えるようなリーダーになり、地元の線路を守っていきたいです。

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