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輝く匠

安全・安心を支える技術(第12回)

正しい判断を支える知識と経験を養う(広島支社 広島管理駅 三登 昇 係長)

広島支社 広島管理駅 三登 昇 係長

匠プロフィール
昭和52年4月に国鉄に入社し、連結担当として広島駅に配属される。以後、駅での運転取扱業務をくまなく経験するとともに、平成6年からの3年間は広島CTCセンターでの指令経験も有している。平成21年6月から広島支社営業課に所属し、運転業務の教育担当や駅運転のエキスパート集団であるチームSOSを経て、現在は広島駅とその周辺地域の駅運転教育の係長として活躍している。

決められた手順・取り決めが安全を守る

広島駅では現在、大規模な駅改良などと相まって、駅構内では昨年の2倍近い工事が実施されている。列車運行に支障をきたしたり、労災を発生させないためには、正確・確実な工事計画・施工が不可欠であり、工事に関する深い知識はもちろんのこと、計画場面での「確認」と承認に向けた「判断」が重要である。駅輸送業務に精通する三登は言う。「決められた手順・取り決めを守る限り安全は守れる」と。そのためにも、三登は業務の中で「記録」と「復唱」を通じた確認を徹底させている。特に打ち合わせにおいては、時刻・相手・内容などを確実に記録する。これは異常時でも同様であり、運用変更や指令指示の訂正が発生した場合に確実に対応するためだけでなく、自分の指示に対して責任を持つためでもある。

また、的確な判断を行うためには駅運転について定めた規程や準則の理解に基づいた判断も不可欠だ。三登は言う。「駅運転の業務は一瞬の判断を求められます。私はこれまで、規程は繰り返し読み込んできました。体で覚えることも重要ですが、限られた時間の中で応用の利く判断力を養うために、まずは規程を理解することが大切なのです」と。

正しい理解と経験を自信に

三登が規程の理解に重点を置くのには理由がある。平成11年7月に駅長業務の資格を取得した後、徳山実設訓練センターで資格維持教育を受講した時のことだ。異常時に閉そく方式を変更する訓練で、当務駅長として指導通信式を施行することとなったが思うように動けなかったのである。20年間の駅運転の経験に自信を持っていた分、余計に悔しさを感じた。三登はその時、規程の理解と経験は技能向上にとって両輪の役割であると実感したのである。この「恥をかいた」経験をバネに、規程の勉強に励むと同時に、上司やベテランに異常時の心構えや取り扱い・指示の出し方について積極的に質問した。「異常時に強い男」と言われたい。三登は強く思った。

その後、平成15年4月から係長として広駅に配属された。着任して間もない時期に雨規制が何日も続いた。知識と経験をもとに覚悟を決めてお客様への対応と運転整理などを一手に引き受けた。その後も、車両故障による救援列車の運転や軌道短絡の対応など、さまざまな異常時の運転取り扱いを経験した。規程を熟知していることと、単線・複線、CTC・非CTC、大小さまざまな駅での経験が、「広島地区ならどの駅でも対応できる」という自信につながっている。

育成への思い

三登は現在、これまでの経験を買われ教育担当の係長として広島駅で駅運転の指導を担当している。広島駅の運転業務で半数を占める若手社員は、知識は習得しているが経験は少ない。「異常時の本番では手が震えるはずです。だからこそ何度も訓練して自信と度胸をつける必要があるのです」と言う三登は、厳しいかもしれないが「考えさせる」訓練にこだわっている。経験不足を補うための異常時を想定したさまざまな訓練のほか、夜間に実施する工事列車の作業では、若手社員に計画だけでなく、現地での立ち会いや振り返りをさせ、現場をイメージできる実践的な教育に努めている。

「訓練ではうまく対応できなくてもいい。恥をかけ。間違ってもいいから自分の意見・思いを持ってほしい。そして本番では、どんな場面に遭遇しても果敢に立ち向かってほしい」。

上司は三登をこう評価する。「彼は今時珍しいほどの情熱家です。厳しく温かい指導に、いつも若手が慕って集まってくる」と。三登の体当たりの指導は、これからも続く。

  • 新任社員の教育にて。「考えさせる」ことにこだわっている。
  • 規程や準則など守るべきルールは多岐にわたる。
  • 厳しさと優しさを使い分け、コミュニケーションを図る。

未来の匠

澤井 幸政

駅・指令業務に関して高い知識を習得されています。私たち若手社員に熱心に指導してくださり、理解できるまで教えてくれます。厳しい指導の中にも人情があり、他愛もないことでも親身になって相談に乗ってくれるので信頼しています。

私は昨年、若手社員の中での指導役である運転リーダーを経験し、人を指導する大変さを実感しましたが、三登係長の指導のやり方や心構えが参考になりました。将来は三登係長のような責任感があり、何事にも果敢にチャレンジできる社員になりたいです。

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