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輝く匠

安全・安心を支える技術(第3回)

一人ひとりに気持ちを近づけ、仕事への興味を引き出す指導を目指して(電気部 電気技術訓練センター 澤野井 学 主査)

電気部 電気技術訓練センター 澤野井 学 主査

匠プロフィール
昭和57年4月、日本国有鉄道に入社し、大阪変電区に配属。高槻電力区、京都電力区では電力部門の各業務を習得した。その後、専門である変電の知識・技能を買われ、湖西線の変電所機器の老朽取り替え工事を担当する。
平成23年6月に電気部 電気技術訓練センターに着任し、社員研修センターで若手社員の教育に携わっている。

国鉄末期以降、新規採用を抑制したことにより、当社社員の年齢構成は、中堅となる30〜40代の社員が極端に少ない。そのため、若手社員への教育の重要性が強く求められている。今回紹介する「匠」は、この課題を克服すべく社員研修センターで電力系統の若手社員に教鞭を執る澤野井だ。

後輩を教育する立場になって

高校で電子科に所属していた澤野井は、国鉄という巨大組織の電気系統で活躍したいとの思いを抱き、昭和57年に国鉄に入社した。翌年から新規採用がストップしたため、入社9年後に高槻電力区で初めて後輩が配属されてきた。澤野井の入社時と異なり、当時の電気部門では新入社員に電力、電車線、変電など電気部門全般の業務を経験させるジョブローテーションが採用されたため、次々に入れ替わりやってくる新入社員に業務の基本を指導する立場となった。澤野井が専門としていた変電の業務は電車線や駅に電気を供給する拠点となる変電所のメンテナンスを行うのだが、目で見て分かりにくい分野であり、技術を習得するのに特に時間がかかるため、限られた時間の中で新入社員に変電の知識・技術を効果的、効率的に教えることの難しさを痛感させられた。

育成の大切さを実感した老朽取り替え工事

平成12年には堅田電気区に配属され、湖西線の8箇所の変電所機器の老朽取り替え工事に携わった。変電業務を熟知していた澤野井に白羽の矢が立ち、3箇所の変電所の設計から施工監督までを任された。安全で保全が容易な設備にすることを目標に基本構造を一からチェックするとともに、工事が安全、円滑に進められるよう工事関係者との施工打ち合わせにも時間を惜しまなかった。このプロジェクトに配属された若手社員に対し、澤野井は忙しい中でも粘り強く、親身に接した。その社員は徐々に力をつけ、澤野井自身の業務をしっかりサポートする存在になったという。将来の現場を支える若手社員を育成する大切さを実感した。

若手社員の教育にあたって

澤野井はその後、京都電気区、湖西電気区の係長を経て平成23年6月に電気技術訓練センターに配属された。誠実かつ温厚に若手社員を育てる姿勢が評価され、当社の入社5年目までの若手社員のみならず西日本電気テック(株)と西日本電気システム(株)など、グループ会社の新入社員も対象に変電全般を指導する講師に抜てきされたのだ。

当初は大人数を前に教鞭を執ることに戸惑い、思いをイメージ通り伝えられなかった。自らの知識や技術を確実に伝えるためにはどうすべきか。例えば、分かりやすく伝えるために、伝えたい内容を図や絵で説明することとした。研修生が具体的にイメージしやすいだけでなく、研修生の疑問をつぶさに理解できるようになり、コミュニケーションを高めることにもなったという。また、研修カリキュラムの細部に至るまでの注意事項をきめ細かく指導の手引きにまとめ、他の講師と共有し、講義の品質を維持するよう努めている。

澤野井は若手社員にこう期待する。「仕事に興味を持ってほしい。興味を持てばやりがいを見いだせ、技術の上達も早くなる」と言う。教えられる側はそれぞれ理解のスピードや得意分野が異なる。だからこそ心のこもった指導に努め、一人ひとりに気持ちを近づけ、それぞれに必要なフォローを見つけ出す努力を惜しまない。

澤野井は自らを「匠の域には到達していない」と語る。新入社員のころに出会った先輩社員たち…自分が知らないことを何でも知っていて、できないことを何でもできる…彼らこそが理想とする「匠」だと言う。

これからも謙虚に、講師としてのさらなるレベルアップに挑み続ける。

  • 計測器の取り扱い方を説明する。
  • 丁寧できめ細かい指導に努めている。
  • 電気の仕組みを図や絵を使って説明し、研修生とコミュニケーションを図りながら講義を進める。

上司から見た匠

塚本 和宏

電気技術訓練センター センター長

長年の経験に基づく素晴らしい技術を持っていても、それを研修生に伝えることができなければ私たちの使命は遂げられません。特に社会に出てきたばかりの新入社員に伝えるためには、自分たちの仕事の面白さや意義を粘り強く伝え続けるという『熱意』が不可欠です。澤野井講師は、優しく穏やかな語り口にその熱意を秘めて、知識を与えるのではなく研修生に興味を持たせ自ら学ぶ姿勢を習得させようと、日々研修生と接しています。澤野井講師をはじめとする講師たちの熱意に応えるために、私たちスタッフも講師に負けない熱意をもってサポートしていきます。

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