鉄道に生きる

中野 聖子 倉敷駅 運輸管理係

お客様の笑顔のために今できるベストを尽くす

入社以来続けているのは、目の前のお客様が「今、何を求めているのか」を考え、対応することという中野。お客様の“心のツボ”を押すことができた時が何よりうれしいそうだ。

最高のサービスでお客様を迎える

発車間際のお客様には、ホームのご案内とともに「お気を付けてお急ぎください」と、安全への思いを込めて声を掛ける。

 「お気を付けて、いってらっしゃいませ」。観光都市倉敷の玄関口、倉敷駅みどりの窓口を担当する中野は、お客様に切符を手渡す時、そう言葉を添えて一礼する。入社10年目を迎える中野は、新倉敷駅で新人時代を過ごし、岡山駅を経て、昨年6月に当駅に配属。入社当初からみどりの窓口での乗車券の発売業務を中心に、お客様のホームへのご案内や乗り越し精算などの改札業務にも携わり、駅業務全般におけるキャリアを積んできた。

 窓口業務で心掛けているのは、「目の前のお客様から笑顔をいただくこと」という中野。例えば、乗り換えに不安を抱えているお客様には、何度も乗り換え時のポイントをご説明し、スムーズに目的の列車に乗っていただくよう、サポートする。「大丈夫ですよ」と、お客様に安心してもらうための一言を添える気遣いも忘れない。こうしたお客様へのご案内に必要な技術を磨くため、入社2年目には社内資格である「駅業務実務認定試験」にチャレンジし、最高ランクにあたるSAランクを取得している。専門知識はもちろん、マルス(乗車券を発券する端末)操作の正確さやスピードなど、筆記・実技ともに満点でないと認められない試験に合格したことで、自信に繋がった。「お客様に対しても、余裕を持って応対できるようになりました」と、成果を語る。

乗務員の経験を駅に繋げる

「きれいにすることからいい仕事ができる」と、駅美化に取り組んでいる倉敷駅。コンコースを回り、気付いた所を整える。

 現在、駅業務の若き担い手として、持ち前の力を存分に発揮している中野だが、ここへたどり着くまでには、大きな転機を経験したそうだ。実は中野には、倉敷駅に配属されるまでの4年間、車掌としての経歴がある。学生時代、JRを利用して通学していた中野は、間近で見ていた車掌に憧れを抱き、入社してからは車掌を目指して業務経験を積んだ。試験に合格し、車掌として晴れて乗務した時は、「本当にうれしかった」と当時を振り返る。乗務していたのは、山陽本線をはじめ、伯備線、津山線など岡山駅に乗り入れる全ての路線。安全を第一に、お客様に少しでも満足してもらえるよう、ドア扱い、車内放送、車内巡回などの業務に取り組んだ。しかし、一昨年の更新試験で不合格となった。「正直、戸惑い、動揺しました」という中野。そんな中、新入社員の頃にお世話になった方からの「あなたにしかできないことがきっとある。くじけないで」という言葉に励まされ、気持ちを前向きに切り替えた中野は、駅業務に自分のベストを尽くしている。

 「車掌の仕事は、ドア開閉の操作一つをとっても事故に繋がる可能性があります。おかげで、瞬時に確認し、的確に判断する力が鍛えられました」と、車掌の経験で培った力を駅のさまざまな場面で発揮する。また、車内巡回がなかったため、精算できなかった切符を持って改札に来られるお客様には、お詫びとともに、「他の業務にかかり、車内巡回に伺えなかったのかもしれません」と、事情をお伝えすることもあるという。「車掌とお客様を繋げる役目が少しでもできれば」と、自分にしかできない仕事を日々実践している。

笑顔という“光”のおもてなし

お客様のお迎え、お見送りは、アテンダントの大切な仕事。観光列車「La Malle de Bois(ラ・マル・ド・ボア)」でのひと時に、笑顔とおもてなしの心を添える。

 大きな転機を乗り越えた中野に、また一つの転機が訪れた。今年4月から、宇野みなと線(岡山駅〜宇野駅間)での運行を開始した観光列車「La Malle de Bois[ラマルドボァ]」で車内サービスを受け持つアテンダントに抜擢されたのだ。おしぼりやオリジナル記念乗車証の配布、沿線の名所案内などを行い、お客様の特別な旅の時間をサポートしている。車掌や駅業務の経験を活かすだけでなく、観光列車でお客様をもてなすアテンダントにふさわしい接客サービスを学ぶため、さまざまな研修にも参加したそうだ。その時、ある講師の「観光とは、光を見せること」という一言が、中野の心に深く響いたという。「笑顔は光。再び列車に乗務し、笑顔でお客様に接する喜びを感じています」と、今また新たなステージに挑んでいる。

 目の前にいる人が何を求めているのか、自分には何ができるのかをいつも考え、行動するという中野。その姿勢は、お客様だけでなく、職場の上司や同僚に接する時も変わりはない。苦手な人にもあえて話し掛け、周りの空気を和ませる。「人との触れ合いの中で、自分を磨いていきたい」。その思いは、触れ合う人の心に笑顔という“光”を届けている。

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