鉄道に生きる

長田 亜紀子 (新幹線管理本部 博多総合車両所 技術科)

お客様の夢と喜びを車両改造で創出する

1号車に、1,800mm×1,800mmの大型ジオラマが設置された『プラレールカー』。
新幹線に乗車しながら人気のプラレールワールドを満喫できる。

安全と快適を支える縁の下の力持ち

設計図面をチェック。図面の管理、予算の管理も長田が担当する。

 東海道・山陽・九州に跨がるエリアを走る新幹線の検査・修理を行っている『博多総合車両所』。本所は、120万kmまたは3年ごとに全ての機器を取り外し、車両を詳細に調べる全般検査をはじめ、2日ごとに車両の消耗品の補充や取り替え、装置や車体の状態を外部から見る仕業検査など、多様な検査・修繕を行っている、いわば新幹線の安全と快適を支えている縁の下の力持ち的な存在だ。

 博多総合車両所では、新幹線車両の検査・修繕作業のほかに、車両の安全性と快適性を高めるための改造・改良工事も手掛けているが、2014年7月に登場し、多くの家族連れや子どもたちに親しまれている『プラレールカー』の改造も行っている。(プラレールカーの運行は8月30日まで)

 「一番大切にしていたことは、子どもたちに対して、どれだけ目配り、気配りを持ってこの車両を改良できるかです」と語る長田。2004年4月に入社以来、車両の改良工事、走行試験など技術畑一筋に歩みながら専門技術の研鑽を重ねてきた女性エンジニアだ。プラレールカーの改造工事では、車両の設計業務を担当し、デザインやイメージに沿った仕上がりになるよう関係部署への指示、また実際に車両の改造工事が始まってから運用開始の間までは、工事進捗状況の確認・管理や施工現場の調整を行った。このような過程を経て、子どもたちに人気のプラレールカーは誕生した。

仕事に女性ならではの“思いやり”

毎朝のミーティングで工事や工程の進捗を確認。進捗の共有を行いながら、より効率的で確実な作業を目指している。

 長田が、女性エンジニアとして常に大事にしていることがある。

 「先輩技術者から、仕事に対する目配り・気配りの大切さを学びました。技術系の仕事は男性の仕事というイメージがありますが、女性の自分だからこそ、目配り・気配りに加えて、もっと思いやりを持って仕事ができるはずだと考えるようになりました。工事の説明の仕方や方法を伝える場合も、相手に分かりやすく、工夫するように取り組んでいます」。その言葉の根底には相手に対する女性ならではのきめ細やかな気配りと思いやりがある。もちろん、そんな長田の思いやりは完成したプラレールカーの随所に息づいている。

 「走行する車両の中で、子どもたちがどこにぶつかっても怪我をしないように、なるべく角を出さないようにしています。クッション材も見えるところだけでなく、見えにくい場所にも入れています。子どもたちの行動は予測しにくいので、できる限り子どもたちの目線で動きを想像しながら設計・施工を行いました」。

 長田をはじめ、改良工事に携わった関係者の“思いやり”がいっぱい詰まったプラレールカー。大好きなプラレールワールドが広がる車内で、子どもたちや保護者が安全に、そして安心して新幹線の旅を楽しんでいる。

車両改造を、お客様の喜びに繋げていく

内装には、子どものために安全に配慮した素材が使われ、デザインや色づかいも楽しさを演出している。

 「プラレールカーだけでなく、私たち技術科では車両の改良や走行試験などを通じて、お客様に満足いただける安全で快適な新幹線を提供するために日々取り組んでいます。これから技術科で共に働く後輩たちとも、その思いを共有していきたいです」。

 今では新人技術者たちの教育担当となった長田。かつて先輩の技術者たちから学んだ仕事への目配り、気配り、そしてその根底にある思いやりを後進たちにも継承してほしいと願っている。

 「プラレールカーの車両改造工事ではこれまでにない苦労がありました。でも運用前の試乗会で楽しそうにはしゃぐ子どもたちの姿を見て、ほんとうにうれしかったです。また、苦労の分だけ、自身の成長を感じることもできました。プラレールカーは通常の改造とは異なる特殊な事例ですが、普段私たちが手掛けている車両の改造や改良も、お客様の喜びに繋げていけると信じています」。

 たくさんの子どもたちの夢を叶えた若きリーダーの挑戦は、次の喜びの創出へ向かってすでに始まっているようだ。

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