志村  進(51) しむら すすむ 金沢支社金沢総合車両所 品質管理センター

安全と品質にこだわり、信頼の高い車両を送り出す

鉄道に生きる

ライトなど電装系のチェックを行うため、運転席に指示を出す。

“故障の起こる可能性”を見つける

 列車を常に良好な状態に維持するため、定期的な検査は欠かせない。とりわけ、修繕や改造を終えた車両において作業が適切に行われているかどうかを評価する出場検査は、車両を送り出す際の最終チェック工程として極めて重要だ。

「高品質の車両を提供するために、私たちは出場検査において『みつける検査』の取り組みを行っています。これは従来の検査に加えて、故障や不具合が発生しやすい箇所や見落としが発生しやすい箇所を重点的に検査し、故障が発生する前に“故障の起こる可能性”を見つけることを目的にしています」。

 10年前から出場検査業務のチームリーダーを務める志村は語る。 「たとえば、部品単体で問題がなくても、車両に搭載した時に思わぬトラブルが発生することがあります。また、配線の防水処理など、一見すると問題のない修繕でも、そのままでは不具合が発生する場合もあります。送り出す車両の隠れたリスクも含めて徹底的に検査し、故障を減らすのが『みつける検査』です」。

 『みつける検査』のポイントになるのが、これまでの経験だと志村は言う。金沢総合車両所品質管理センターの年齢構成は7割がベテラン社員で3割が若手社員。ベテランが培った経験や見識を、次代を担う若手に継承していくのも志村の仕事だ。

朝、昼のミーティングでは、作業進捗の確認や、どのように不具合の処置を行ったかを皆で共有する。

「これでいいのか」と考える“間”を大切にする

 「自分自身が恐い思いをして、初めて分かることもあります」。そう語る志村も若い頃に先輩社員から薫陶を受けた。

「品質管理センターに配属された直後、電気系統の取り扱いには細心の注意を払うよう、先輩社員から何度もアドバイスされました。でも、何度言われても、ちょっとした気の緩みで周りをヒヤッとさせることがありました。その度に、先輩の言葉を思い出して、気を引き締めてきたものです」。

 指導する立場になった今、志村は一つのことを徹底して後輩たちに教えている。

「慌てて作業をするな。慌てても何も変わらない。そのことを言い続けています。どんな作業を行う時も、何も考えずにやるのではなく、“本当にこのやり方でいいのか”そう考える“間”を持てと言っています。それは安全に対しても、品質に対しても同じで、“これでいいのか”と考える間が、仕事の質を向上させます。仕事に慣れた時や、慌てている時は、その“間”がなくなることがありますが、それは本当に恐ろしいことなのです」。

 考える“間”の大切さ。技術的なことだけではなく、仕事に向かう姿勢もまた、志村たちベテランが継承するべき大切なことなのだ。 「私自身がそうだったように、人は自分の失敗経験から学ぶことが多いと思います。しかしその失敗が致命的な失敗にならないように、私たちベテランは後輩を見守っていかなければならないと思います」。

 現場こそ最良の教科書である。後輩たちの仕事の一つひとつに、先輩社員たちの眼差しが注がれる。

車両の動きを制御する『車両制御盤』を前に、若手技術者に検査の見るべきポイントを伝える。

“チーム金沢総合車両所”として力を発揮

 JR西日本は、車両設備が原因となる故障を半分にすることを目指して、昨年度から『故障半減55!!』の取り組みを行っている。その実現に向けて車両では『みつける検査』をはじめ、どんな些細なことも妥協せずに車両品質の向上に日々努めている。

「私たちの業務は駅社員や乗務員とは異なり、直接お客様と接する機会は少ないですが、車両を介して接していることを強く感じています。車両の不具合でお客様にご迷惑をお掛けしない。品質向上、故障ゼロへのこだわりを大事にしています。そのために、社員同士はもちろん、グループ会社の社員とのコミュニケーションを大切にし、“チーム金沢総合車両所”として持てる力を十分に発揮していきたいですね」。

 より作業が安全で確実にできる作業環境のために、日々のミーティングは欠かせない。「若手もベテランも参加するミーティングでは、皆が改善の意識を持っています。常に改善のネタがなくなることがないのは、それだけ皆の意識が高いという証です」。

 “本当にこのやり方でいいのか”安全と品質に対するこだわり、仕事の質を向上させる姿勢は、すでに“チーム金沢総合車両所”でしっかりと共有されているようだ。

安全に大きく関わるドア部分を入念にチェック。

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