吉田  幸(29) よしだ さち 草津管区 草津駅

お客様の視点を軸に、サービスのクオリティーを高める

鉄道に生きる

お客様の旅がよき旅になるよう、いつでも明るく送り出したいという吉田。

駅は暮らしの心地よい起点でありたい

 「私たち駅係員は、旅の始まりと終わりにお客様と接するので、お客様の旅を印象づける上で私たちの役割は大きいと思います」。そう語る吉田のキャリアは8年。入社以来、切符を販売する出札業務をはじめ、改札業務、案内など駅業務ひとすじにここまで歩んできた。現在では駅の信号を扱うことができる『在来線駅長業務資格』も持つ駅業務のエキスパートだ。

 「普段利用している駅に帰ってきたら、誰もが自分の暮らす場所に帰ってきたなぁという思いが湧くはずです。駅とはそういう場所だと思うのです」。暮らす場所から、働く場所や学ぶ場所へと出掛けて行く。そしてまた暮らす場所へと帰ってくる。いわば駅とは、暮らしの起点であり、人生の起点にもなる場所。だから吉田は顔なじみのお客様にも、初めて会うお客様にも精一杯の対応を心掛ける。

ホームでの業務は、安全確認やお客様案内を行う。
構内では、掃除中でも設備の些細な異常を見逃さないよう目を光らせている。

 「お客様には気持ちよく出かけていただき、気持ちよく帰ってきていただきたい。そのためにできるだけのことをしたい」。学生時代には介護職を目指していたという吉田はもともと、誰かの役に立ちたいという強い思いを持っていたという。

どんな時でも、誰もが同じことができるように

 吉田がまだ新人だった頃、草津駅に来られたお客様がうっかりお金を落されたことがあり、吉田は散乱したお金を拾うお手伝いをしたことがあった。後日、そのお客様からお礼のメールが届き、吉田は驚いた。

 「遠方のお客様からわざわざお礼のメールを頂くなんて本当に驚きました。私自身は忘れてしまうくらい当たり前のことをしただけですが、お客様の心に残っている。うれしかったのと同時に、この仕事の意義を考えるきっかけになりました」。

 以来、吉田は“鉄道業の仕事をしている”のではなく、“接客の仕事をしている”という意識に変わったという。

 「駅業務は、お客様を安全に目的地までお運びできればいい、という考えだけでは成り立ちません。駅業務を接客の仕事と捉えれば、お客様の立場に立って考動できると思います」。お客様がお困りになった時や、何かを相談された時にはベストの対応をしたいと吉田。

 「その時の状況で対応はさまざまですが、例えばダイヤが乱れて、お客様から目的地にどうすれば早く着くかを問われた場合、バスやタクシーなど他の交通手段をお勧めすることもあります。大事なことは、お客様へのご迷惑を最小限に抑えるために、全ての駅係員が考え、行動しなければならない。どんな時でも駅が、一つのグループとしてのクオリティーを提供できなければいけないと考えています」。

通常は自動化されている信号。しかしシステム故障などの異常時に備えて、手動で操作できるよう日頃から訓練を重ねる。

見習うべき姿を、全員で共有していきたい

 駅全体としてのサービスのクオリティーが大事。吉田は見習うべき先輩の駅員の姿を通してそのことを考えるようになった。

 「ご案内一つとっても、ちょっとした言葉遣いの違いで、お客様の反応がまったく違う。他の人のやり方で参考にできることはたくさんあります。それを共有できれば、駅全体のサービスのクオリティーが上がるはずです」。吉田のそんな思いと呼応するかのように、駅業務全般を先輩やリーダーから学ぶ『駅スパート草津塾』という勉強会が定期的に開催されるようになった。

 「駅には車掌や運転士を目指している新人も配属されます。彼らにもさまざまな経験や先輩のアドバイスを生かして、お客様の立場に立って考え、行動できる車掌や運転士になってほしい」。

 「いい旅ができた」とお客様から言われるのはうれしい。しかしそれ以上に、お客様との応対を通して後輩たちの成長している姿を見るのがうれしいと吉田。

 「ここを卒業して、次のステップへ行った仲間からも、この駅での経験があって良かったと言われる場所でありたいですね」。今日も未来を見据えながら、草津駅の駅業務を担う大黒柱として吉田の思いと行動は続く。

後輩への指導では、事例をもとにシミュレーションしつつ、現場での実践力を養う。

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