古野 秀岳(31) ふるの ひでたけ 広島支社 営業課 チームSOS

使命感と行動力で、現場を後方支援する

鉄道に生きる

災害や設備の故障などの異常時に、指令所の管轄から駅単位の管轄になった場合、信号による進路の制御などの業務を行う。正面の機器は「制御盤」と呼ばれている。

より早く、より安全を期すために現場をサポート

 駅では信号により進路の制御や列車の順序を管理する「駅運転業務」と呼ばれる業務がある。現在は中央で集中制御するようシステム化され、駅自体で制御することは少なくなってきたが、災害や設備の故障などの際や駅構内の工事で、このシステムや信号が使えない場合は、駅員が列車を1本ずつ制御しなくてはいけない。実務経験の少ない駅員に対し、支援、協力を行うことを目的としたプロ集団として「チームSOS」は発足した。

 「たとえば車両を違うホームや車庫に移動させる際、通常時は指令所が制御することが多いのです。しかし、駅構内の工事や不測の事態が発生した場合、指令所から独立して駅単位で列車に指示を出すことがあります。そのような場合に、駅員について業務を支援するのが我々の役目です」。

 そう語るのは、2011(平成23)年チームSOSに配属された古野秀岳。入社以来、改札業務などを経て、駅運転業務に従事、現在はチームSOSの一員として日々の任務を遂行している。

 「駅員だけでもとっさの対応や工事対応は可能です。しかし、より早く、より安全を期す上で、要請に従って我々がサポートに入ります」。

チームSOS社員と次回訓練の打ち合わせ。訓練時における問題点の洗い出し、考えられるリスク、講じるべき対策などを繰り返し検討する。

チームSOSが胸につけているワッペン。

事例から学び、現場へフィードバック

 本年2月24日、山陽本線八本松〜瀬野駅間において、列車と軽自動車が接触し、ブレーキユニットの破損によって列車が運行不能になる事故が発生。この時、指令所から連絡を受けたチームSOSは現場へ向かい、列車からお客様に安全に降車していただいた後、自力で走行できない車両を他の車両と連結し駅に収容する指揮を執った。

 「我々が出動する時は、列車が運行できない時です。お客様の安全を確保し、一刻も早く運行を再開するためにどうすれば良いか、それを日ごろからシミュレーションしています。この時も、日ごろのシミュレーションや訓練を生かし、冷静に臨機応変な対応ができたと思います」。

とっさの際には、広島総合指令所、広島駅、貨物ターミナル駅など、同時に3カ所との連絡を行うこともあり、そのための訓練も日ごろから行っている。

 そう語る古野だが、事故後の人員の配置や関係各所の打ち合わせによって、もっと早く故障車両を駅まで収容できたのではないかとの反省も欠かさない。

 「 個々の事例を記録、検証し、さらに不測の時の対応の精度を上げるのも大事な任務です。実際の現場ではシミュレーション通りにいかないことも多い。だからこそ、過去の事例をきちんと振り返り、そこから学び、学んだことをまた現場にフィードバックしていきたいのです」。

 いかなる時でも頼りになる存在であるために、今後も継続的に現場支援を行いながら、さらに活動の幅を広げていきたいと古野は考えている。

駅員たちの力になれるように、さらなる研鑽

 チームSOSでは、原則的に現場において指導よりも「支援」を優先させている。それには2つの理由がある。一つは、チームSOSが緊急出動する時は一刻一秒を争うため、現地の社員のサポートに全力を捧げていること。もう一つの理由は、通常の駅運転業務において、各現場の駅員たちが主体的に動けるように現場をコーディネートすることを第一義としているためだ。

 「たとえば摩耗したレールを取り替える工事の際の列車運行を支援する場合、考えられるリスクを想定し、講じるべき対策を立て、解決策を提示します。我々は過去の事例や経験から、現場の駅員や作業員が安全に、またスムーズに作業が行えるようサポートをする、いわば安心と安全のための裏方なのです」。

 そう語る古野にとって、訓練や現場での交流を通じて、駅員たちが自信を持って作業にあたる姿を見ることが何よりうれしいという。

 「駅運転業務のシステム化が進んでも、駅員が対応する場面はなくなりません。現場の支援を通じて、駅員たちの力になれるよう、自らもさらに研鑽を深めていきます」。

 安全、かつ確実な列車運行のために。スペシャリストの誇りと責任を胸に、チームSOSの活動は続く。

担当エリア全駅の制御盤図面を、現地に赴き1年がかりで作成。あらゆる場合を想定し、必要となるものは全て準備しておく。

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