中井 克彰(32) なかい かつあき 福知山支社 福知山電車区

後進とともに、車両の安全を支える

鉄道に生きる

お客様を快適に運ぶために

新型車両の電気連結器について後進の技術者に説明する。現場で現物を見せながらの説明が一番の教育になる。

 山陰本線、福知山線、舞鶴線など、北近畿地区で運用される車両のメンテナンスを行っている福知山電車区。ここには車両約150両が配置され、全車両のブレーキをはじめとする機器類を数日おきに検査する仕業検査や、より詳細な検査を行う交番検査が日々行われている。

 中井は、検査業務をはじめ新任者の実務能力向上など後進教育を担う期待の中堅メンバーの一人だ。

 「快適という観点からは、お客様が直接ふれる座席やリクライニング装置にゴミや汚れがないか、安全の観点からは特にブレーキや保安装置について集中力を高め、常に緊張感を持って検査に臨んでいます。お客様を快適に運び、そして何の問題もなく、無事に車両基地に帰ってくる。この当たり前のために、自分のやるべき仕事を確実にやり通す、それだけです」。

 淡々と語る中井だが、新人技術者の教育を任される今日まで、中井自身も先輩技術者から厳しくもかけがえのない数々の薫陶を受けてきた。

段取りが仕事の質を向上させる

 中井の入社は1998(平成10)年。兵庫県の鷹取工場部品職場や網干総合車両所部品センターを経て、2002(平成14)年に福知山運転所電車センターへ配属され、車両の検修業務に従事。2006(平成18)年からは後進の育成を行っている。

 「配属されて間もない頃ですが、山間部を走る車両が鹿とぶつかり、現場に駆けつけたことがありました。最初は戸惑いましたが、先輩の指示でなんとか対応することができました。普段とは違うイレギュラーな作業に対応するたびに、基本の力を身につけている大事さを痛感しました。基本となる力がないと、臨機応変な対応などできないのです」。

月1回定期的に行われる勉強会。新型車両を導入する場合は、検査・構造についての講習を実施する。「車両の進歩とともに、人も成長する」と中井。

 仕事への準備、心がけという意味から、技術者の勉強に終わりはないと中井。

 「車両の搭載品に関する知識をはじめ、検査・材料などの管理システム、新型車両の知識など、覚えることはいくらでもあります。それらを身につけていくことが基本の力を養うことであり、より確かな作業のための準備になります」。

 また、新人だった中井に先輩技術者が何度も叩き込んだことは、段取りの重要性だった。

 「段取り八分とも言われますが、日ごろから自分のやるべきことを想定し、準備をしておくこと。作業所では、普段からどこに何があるかを把握しておくことはもちろん、作業の計画や手順など、知識だけではなく段取りこそが仕事の質を向上させるということを先輩から学びました」。

教える立場だからこそ、よき見本でありたい

 5年前、中井が教育担当になってはじめに取り組んだのが、新人教育に関する教材やマニュアル制作を通じての教育体系の整備であった。

 「年々増加する若手社員が、効率的かつ確実に基礎を学ぶにはどうすべきか。まずは、何のために、何を、いつまでに習得するかを明らかにすべく、教育要領をまとめたり、教育スケジュールを作成しました。そうすることで、教材の選定やテキストなどの必要なツールも明確になりました」。

 先輩から叩き込まれたという段取りの力は、人づくりという重要な業務の側面にも活かされているようだ。

 「車両も一両一両のコンディションが違うように、研修を受ける新人も一人ひとり違います。教育では各人の理解度や習得度を把握することが大事です。何より、教える立場の人間が見本にならないと後輩はついてこないと思います。私はこれから電気や保線のことも勉強して、そこで得たものを、業務や後輩の技術者たちにフィードバックしたいと考えています」。

 「これからもとことん車両の検査・整備を究めていきたい。そして自ら学んだ段取りの重要性を後進に継承していきたい」と中井。力強く後進を牽引するリーダーの心に迷いはない。

一口試問や知悉度試験だけでなく、日誌を読むことで、新人たちのぶつかっている壁や理解度を把握できる。

中井が作成した教育・整備マニュアル。マニュアルを見直したことで、計画的な教育が実施されるようになった。

ページトップに戻る
ローカルナビゲーションをとばしてフッターへ