倉内 寛史(36) くらうち ひろし 新幹線管理本部 大阪新幹線運転所 運転士

確固たる信念で、新幹線の安全を支える

鉄道に生きる

新幹線運転士の職務とは何か?

 1987年のJR発足以後に採用された世代が今、さまざまな部署の中核として活躍している。大阪新幹線運転所の運転士、倉内もその一人だ。平成5年に入社し、駅での改札業務や車掌、在来線の運転士などを経験。平成12年に新幹線の運転士となった。

 幼少の頃から新幹線運転士になるのが夢だったという倉内は、お客様を安全に、快適に目的地へお届けするという責任感と使命感を胸に念願の運転士を務めている。そのなかで倉内が常に考え、自分に問いかけているというのが、新幹線運転士の存在価値についてだ。

「新幹線の保安度は世界に誇れる水準にあります。自動運転も技術的には可能だと思いますが、お客様がお乗りになる車両の一番前には必ず運転士がいます。その意味は何なのか。私なりに出した答えは、人にしかできない安全で快適な乗り心地にこだわった運転でした」。

「確認よし!」。指差確認喚呼を行う声が運転席に響き渡る。

常に快適な乗り心地を提供するために

 倉内が追求する快適な乗り心地。そこには、駅業務や車掌としてお客様と接してきた経験が大きく影響している。

「駅に到着する時、特に到着案内放送が流れ出すと、たくさんのお客様がデッキや通路に立たれます。そのなかには、赤ちゃんを抱っこしながら荷物を持たれている方、網棚から荷物を下ろしている方、足腰が弱く杖をついておられる方もいらっしゃるかもしれない。そんな車内の様子を思い浮かべながら衝動を最小限に抑えたやさしい運転を心がけています」。

 なかでも倉内がこだわっているのが、加速減速のタイミングだ。その日の天候や乗客数なども考慮した上で、どの距離からブレーキを操作すれば揺れを最小限に抑えられるか、ブレーキ扱いの細部にまでこだわり、入駅前の減速は細心の注意を払うという。また、万が一、異常時にも最善が尽くせるように、日頃から訓練用の運転シミュレータを使った研鑽やイメージトレーニングを欠かさない。

出勤点呼前は、全身が映る鏡の前で身だしなみを必ずチェック。

出発前の乗務点呼。当直係長から乗務する列車の注意事項などが伝えられる。

「乗り心地を追求することは、常に自分の背中に1千数百名ものお客様を感じながら運転するということ。それが結果的に安全につながると信じています」。運転士という仕事に真摯に取り組む倉内ならではの信念だ。

「安全」への終わりなき追求

 現在、倉内は指導操縦者として若手の育成にも携わる。倉内のこだわりでもある“お客様を意識した快適な乗り心地”を提供できるように熱のこもった指導を徹底。経験豊富な先輩方が現役のうちに技術や知識を吸収し、自らも後輩へ伝えていきたい。そう強く思うからこそ、指導にも自然と熱が入る。

「世界に誇る新幹線の安全性は多くの方々から支持されています。お客様に“安全・快適”な旅をお届けするのに私たち運転士もその一翼を担っています。そして、その信頼を、新幹線に携わるJR西日本グループの全ての社員が裏切らないようにしなければなりません。速さ、サービス面だけでなく『やっぱり新幹線は安心だね』と、ずっと思っていただけるように、これからも日々の業務を全うしたいです」。

乗務を終え、次の運転士に引き継いだ後は、新幹線が駅を出発する間、パンダグラフをはじめ、車両の状態を確認する。

 倉内は「技術主任運転士」になることが当面の目標と語る。運転士の中でも認定されるのはごくわずか、経験に裏打ちされた高い技術力が必要とされる難関職だ。倉内は日頃からの食事管理はもちろん、視力や聴力が衰えないようにテレビは極力見ずヘッドフォンも使わないなど、些細な努力を怠らない。これからも安全・快適な乗り心地を提供し続けるために。

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