中村 均(56) なかむら ひとし 金沢支社  富山地域鉄道部  泊駅 駅長

人とのつながりを大切に駅とお客様を見守る

鉄道に生きる

町の玄関口で、笑顔のコミュニケーション

 富山県朝日町。富山湾を望む日本海と、朝日岳や白馬岳をはじめとする雄大な北アルプスの懐に抱かれた自然豊かなこの町に、北陸本線「泊駅」はある。一日の平均乗車数は約750人、その内の約7割が通学の高校生で、休日には登山客や観光客を迎える町の玄関口となっている。

 中村が駅長として泊駅にやってきたのは平成20年。駅長を務める中村の1日は、駅員たちの点呼から始まる。駅舎の見まわりを行った後、駅長といえども部下の駅員とともに、きっぷの発売や改札などの業務につく。

「一日の業務のうち、5時間は窓口に立っています。泊駅は都心部にある駅とは違って、お客様との距離が近いと感じます。だからこそ、あいさつはもちろん、お客様との何気ない会話を心がけています」。特に利用者の大半を占める高校生たちは、中村にとって大切なお客様であると同時に、成長を見守る我が子のように映るという。普段の通学時間と違う時刻に地元の高校生が改札を通れば、「テスト始まったの?試験勉強してる?」そんな会話が自然と交わされる。そんな中村の姿を毎日のように見ている駅売店の販売員は「物腰は柔らかいのに芯がしっかりしてる人。町の人からのウケもとてもいい」と絶賛だ。

泊駅は新潟県境から2駅手前の富山県側に位置する。

点呼では、ダイヤや当日の注意事項についての確認、新しい商品についてなど、駅員と情報を共有する。

いざという時こそ、連携の力が試される

 中村は昭和49年の入社以来36年間、改札業務をはじめ貨物列車の連結や列車の運行管理など、駅でのさまざまな業務を今日まで務めてきた。北陸本線が走る富山地域は大雨や強風など災害と対峙する厳しい気候の線区であるが、中でも厳冬期ともなると鉄道員にとって過酷な雪との戦いが待ち構えている。

「県境から先は雪が降ると1m以上も積もる地域もあります。吹雪の中で作業をしたり、始発の何時間も前からホームや駅前の除雪をしたりします」。強風規制や除雪時の輸送障害が発生した場合、中村は関係箇所との調整や駅利用者へのアナウンス、異常時の運転取扱いなどを現場の長として一手に担う。

「何かあった時、駅だけでは対応できません。地域を束ねる鉄道部、支社など各箇所とのつながり、グループとしての連携が大事です」。普段から駅利用者をはじめ関係者とのコミュニケーションを大切にしている中村。その心中には人との“つながり”こそが、鉄道の要であるという思いがあるのかもしれない。

普段から関係箇所や関係者との連携を大切に。問題が発生した時、人のつながりが真価を発揮する。

思いは言葉ではなく、姿で示す

「何を目的に仕事をするのか。私は子どもからお年寄りまで、気持ちよく乗っていただき、そして気持ちよく帰っていただきたい。それがすべてです。だから“笑顔でにこやかに”が基本になって当然です」。一人の“本気”が及ぼす力は大きい。中村が駅長に就任した年に泊駅は社内フロントサービス調査で最優秀駅に選ばれた。さらに中村の思いは今、駅から地域の人々にも広がっている。

 「改札に掲げてある朝日岳のパネルは、地元の山の保存会の方から贈って頂きました。駅前の花壇も、花を愛する会のみなさんが管理してくださっています」。朝日岳の登山口となる泊駅を少しでも良くしようと、町の人も協力を惜しまない。

 「お客様のためにサービスの質、社員の実力を高めたい。それは言葉ではなく、常に姿で示すべきだと思います」。地域から慕われる駅長の言葉は、アルプスの風のようにさわやかだった。

セールス活動も大事な業務。親しくなったお客様から旅の相談を受けることもある。

構内を見まわりながら、キヨスクの販売員の方とおしゃべり。一言のコミュニケーションを心がける。

ページトップに戻る
ローカルナビゲーションをとばしてフッターへ