森  由香(35) もり ゆか ジェイアール西日本フードサービスネット トワイライト営業センター ダイナープレヤデス マネージャー

おもてなしの心で一人ひとりの夢を運ぶ

鉄道に生きる

大きな期待を抱いたお客様を迎える

 1989年7月、前年に青函トンネルが開通し、本州と北海道が結ばれたことから誕生した「トワイライトエクスプレス」。日本海の夕陽、北海道の雄大な風景、そして諸外国の豪華寝台列車を理想とした極上の空間とサービスの提供がこの列車の大きな売りである。だからこそ、迎える側の心構えもまた特別である。

 「乗務の前は、いつも胸が苦しくなるくらい緊張します」。そう語る森の一言から、“憧れの旅”を預かる者の張り詰めたテンションが伝わってくる。森の初乗務は4年前、しかし乗務を重ねるほどに、憧れや期待に応える側の責任の重さを感じずにはいられない。

 「疲れていたり気分が乗らない日でも、乗務前の点呼でテンションが最高潮まで上がります。そしてホームに上がった段階で、完全に気持ちが切り替わっています」。

日本海に沈む夕日とともに走るトワイライトエクスプレス。

目の前で起こっていることへ、ベストの対応を

 主な業務は、食堂車「ダイナープレヤデス」でのサービス業務。クルーはホールと厨房スタッフ合わせて6から7名。マネージャーである森はクルー全体のまとめ役を務める。ランチ、ディナー、朝食のテーブルセッティング、配膳、片付け。その合間を縫うように各部屋への飲物のデリバリー、食事の予約受付け、オリジナルグッズや新聞などの車内販売なども行う。

 「厨房、ホールのクルー全員の息の合ったチームプレーが不可欠です。揺れる車内、狭い空間なので、クルー同士が目配せで会話できないとスムーズにいきません」。大阪と札幌の往復で約51時間、就寝と食事以外は一時も気の抜けない勤務が続く。

 「お客様にとっては、本当に一生に一度の旅になるかもしれません。今、目の前にいらっしゃるお客様に対して、また今起こっていることに対してベストな対応ができるかどうか、それがすべてです」。お客様の期待に応えたいというプロ意識と、完璧なチームプレーが、“憧れの旅”を運んでいる。

ランチから朝食まで、テーブルセッティングは欠かせない仕事。揺れる車内でもスピーディーなセッティングが求められる。

食堂車を離れて車内販売へ。到着時刻や現在位置などを尋ねられることも多い。

夢を運ぶ喜びを、全員で共有したい

お客様のかけがえのない旅を大事にしたい。その思いがトワイライト流サービスの基本。

 森には、かつて先輩から言われた忘れられない言葉がある。「お客様には、この列車にようやく乗れたという喜びがある。だからクルーにも好意的に接してくれていることを忘れてはいけない」。お客様の温かい視線に甘えてはいけない。サービスに完璧な答えはないかもしれないが、サービスの精度を高めることはできるはず。森がマネージャーに就任した2年前からトワイライト事業グループは「教育・サービス向上」チームを発足させ、クルーのより一層のサービス技術の向上と後進の育成に取り組んでいる。

 「おもてなしの心に、ここまですればOKというゴールはありません。現状に満足することなく、お客様の期待以上のサービスを提供していきたい。スタッフでそれを考えて実行していきたいのです」。

 お客様の「夢が叶った」という笑顔の声を聞くたびに、トワイライトエクスプレスは夢を運んでいることを実感するという森。一人ひとりの大切な夢に同乗できるという喜びと、その責任をクルーのみんなと共有したい。さらなる高みへ、トワイライトエクスプレスの旅は続く。

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