あの風景を探して

おかしくて、せつない「ちいさな人間」の成長を描いたドラマ。『ちりとてちん』〜福井県小浜市・美浜町・若狭町・おおい町〜

ロケーションマップ

美しい日本海に面した小浜を舞台に始まる、地味で目立たない少女の成長ストーリー。

 「海のある小京都」と呼ばれる若狭小浜。海岸線に広がる美しく豊かな自然、130あまりもあるという数多くのお寺や神社など、歴史的文化遺産にも恵まれている。

 2007年秋から半年間放送されたNHK連続テレビ小説『ちりとてちん』は、福井県がヒロインの出身地という設定。9歳のヒロイン、和田喜代美が家族とともに福井県鯖江市から、父の故郷である小浜市に引っ越してくるシーンからドラマが始まる。タイトルの「ちりとてちん」とは、三味線の音色を擬音化したことばで、上方落語の演題のひとつ。やがてヒロインは自分を変えたい一心で故郷を飛び出し、向かった大阪で女流落語家をめざすという成長物語。

 福井県が、連続テレビ小説の主な舞台になるのは初めてのこと。ヒロインが高校までの多感な時期を過ごす町として、小浜周辺の地が人情味豊かに描かれている。小浜湾沿いの海辺の景色はもちろん、通学路として登場するのは千本格子の町家が軒を連ねる風情ある三丁町。また、三方五湖を望む梅丈岳などの景勝地でも撮影が行われた。さらに、伝統的な若狭塗箸はヒロインの実家の家業として紹介されたり、小浜から京都へ至る鯖街道の起点とされる商店街などもロケ地となり、地域の伝統産業や食文化などが、ドラマの中で彩りを添えている。

江戸時代には北前船でにぎわう小浜の茶屋街として栄えた三丁町。今も千本格子の風情ある家々が軒を連ね、当時の面影をしのぶことができる。ドラマでは、ヒロインの祖母・小梅が三丁町の元芸妓という設定。また、ヒロインの小学校への通学路としても登場する。

若狭を代表する景勝地のひとつ三方五湖。5つの湖からなり、それぞれ塩分濃度が異なるため、 水の色が違って見えることから「五色の湖」ともいわれる。梅丈岳公園からは五湖を眼下に一望できる。

小浜線にロケ用臨時列車を設定、ヒロインの旅立ちの場面を演出。

 ドラマの時代設定は1982年から始まる。その当時走っていた車両が必要となるため、すでに小浜線では走っていない車両の手配からドラマの撮影協力が始まった。準備したのは、国鉄時代から走っている「キハ28・58」という昔懐かしい気動車。JR西日本金沢支社に残っていた車両を撮影用に仕立て、臨時ダイヤを組んで撮影が行われた。

 列車は、まずヒロイン一家が小浜にやってくる第1話目に登場。高校生になった喜代美が友人と寺の石段で語り合う背景にも通過する。ここは参道の途中に線路があり、ロケは線路近接のため、安全面に配慮しながらの撮影となった。また、列車が重要な役割を果たすのが、ヒロインが小浜から大阪へと旅立つシーン。車中の喜代美が、見送りに来なかった母の姿をのど自慢会場のステージ上に見つけ、号泣するという感動の場面である。列車は小浜と若狭高浜間を何度も往復。その列車にカメラを載せた車を併走させたり、長井浜公園に設けたのど自慢会場からも撮るなど、さまざまな角度での同時撮影が行われた。臨時列車の運行に合わせ、列車側と地上側の2つの演技を収録するという緊張のロケも、連携の取れた現場進行によって成功。

 鉄道は、別れと旅立ちを情緒豊かに演出し、ドラマの中で存在感を示している。

常高寺山門前の石段でのシーンは、臨時列車が通過するほんの数秒のタイミングをはかっての息をのむ撮影となった。また、線路沿いでは安全面に配慮しながら、クレーンに吊り下げたカメラで迫力ある走行シーンが撮られた。

エキストラ50名が加わり、深夜に行われた大阪駅桜橋口でのシーン。駅の改良工事中であったため、工事に伴う音がマイクに入らないよう、工事関係者と連携し合っての撮影となった。

Story & Date

脚本:
藤本有紀
制作:
NHK大阪放送局
出演:
貫地谷しほり、和久井映見、松重豊、渡瀬恒彦 ほか
放送:
2007年10月1日から2008年3月29日(全26週・151回)

NHK総合テレビ、衛星第2テレビ、デジタル衛星ハイビジョン

NHK衛星hiで再放送中:毎週日曜日深夜に6本ずつ(1週分)まとめて放送(2010年9月末終了予定)

小学生の和田喜代美一家が小浜に引っ越してくることから物語は展開。同姓同名の和田清海が優等生であるため、劣等感を持ちながら過ごしていた喜代美は、若狭塗箸職人の祖父の影響で落語に興味を持ち始める。高校卒業と同時に、自分を変えたいと決意した喜代美は、家出同然に故郷を飛び出し、大阪へ。ひょんなことから落語家一家と出会い、落語家への道を歩んでいくことになる。

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