新開 大樹(34) しんかい だいき 大阪電気工事事務所 博多電気工事所 係長

新幹線の安全を支える信号設備を築く

鉄道に生きる

直通運転へ、信号設備をバージョンアップ

 来春の開業をめざしている山陽・九州新幹線の直通運転。現在、山陽新幹線と九州新幹線の分岐駅となる「博多駅」では、開業に向けホームの増設など改良工事が着々と進められている。

 新開が担っているのは、新幹線「博多駅」と車両基地である「博多総合車両所」の信号設備。軌道(レール)を通じて機器室から新幹線に情報を伝達する信号設備は、列車の運行速度をはじめ、制御を司る設備であり、安全運行の根幹を担う重要なシステムである。新開は現在、現場を率いるリーダーとして3名の技術者とともに、信号設備の新設や改良に伴う設計や試験に取り組んでいる。

 「現在使っている信号システムを、直通運転が始まっても対応できるようバージョンアップするのが主な業務です。新しいバージョンのシステムが正しく作動するかを確認する試験は、列車が走らない夜間にしかできません。営業運転終了後に試験を行い、始発列車が走る前までに元通りにシステムを戻す、その繰り返しです」。

 日中は夜間の試験に向けた関係各所との打ち合わせや調整業務、夜間は試験と、まさに昼夜にわたる奮闘が続く。

自分のことより、他者を優先に仕事をする

新しく敷設された軌道での検査。軌条電圧電流計で、機器室から送られてくるデータを測定。正しく信号が届いているかチェックする。

 新開が入社したのは今からちょうど10年前の平成12年4月。福知山電気区に配属され、信号設備の保全業務を担当。その5年後、山陽本線「姫路駅」の高架化に伴う信号設備の施工では監督として現場を担った。

 「姫路駅で初めて監督という立場で設計、施工、そして最後の設備の切り換えまでを担当しました。工事が終わり、無事に初列車が通過した時の感動は今も忘れられません。私の原点です」。入社5年目にして現場を任された若き監督に対し、時の上司は次のような言葉を新開に授けたという。

 「信号設備の新設工事は、土木や建築業務との連携や現場を担う協力会社との信頼関係を築かなければうまくいかない。そのためには、関係者から何か頼まれた時は、たとえ自分の仕事を止めてでもそれに応えること」。以来、その言葉を胸に刻み、新開は今日まで信号設備一筋に現場を担ってきた。

機器室で信号の送受信を確認する。

自ら考え、手を動かしながら学ぶ

 「夜間の限られた時間内で行う試験作業では、今日はここまでやるという工程を確実にこなさなければなりません。しかし、いくら念入りに計画を練っていても現場で想定外のことが起こることもあります。そんな時こそ、日頃から関係各所や協力会社と信頼関係を築いているかどうかが問われます」。

 かつて先輩から教えられた大切なことを、後に続く若手たちにも伝えたいと新開は言う。  「昨日と同じ作業はありません。日々進捗が変わる現場にどう対応するか。それは自ら考え、手を動かしながら学ぶしかありません。そこでパートナーシップの重要性も分かります」。

 少し、また少しと工事が進んでいく信号設備。微に入り細にわたる工程の積み重ねの先に、かつて味わった感動の瞬間が待っている。

 「設備の切り換えが終わり、初列車が無事に通過する時の喜びをみんなで味わいたい。それがあれば、また次の工事もやり通すことができるはずですから」。

 2011年春、世代や立場を超えた大きな喜びが相互の胸に直通する。リーダーの目は確信に満ちていた。

機器室で信号の送受信を確認する。

夜間という限られた時間の中での試験作業。それぞれの持ち場を担うメンバー同士の意思疎通が重要となる。

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