Blue Signal
March 2010 vol.129 
特集
原風景を行く
出会いの旅
うたびとの歳時記
鉄道に生きる
美味礼讃
鉄道に生きる【北口 信子[きたぐち のぶこ](33) ジェイアール西日本メンテック AZZ関西空港ステーション ステーションマネージャー】
駅構内や、車両の清掃を通じて
快適な空間を提供する匠を訪ねた。
世界の人から「ありがとう」の 言葉を聞くために
「魅せる清掃」をめざして誕生
 今から16年前、関西空港の開港に合わせ、これまでと違う新しい清掃スタイルをめざして誕生したAZZ[アズ]クルー。従来の駅清掃や車両清掃を超える品質、そして3Kイメージの払拭を願いスタートしたAZZクルーは、清掃員に若いスタッフを起用したり、カラフルな制服の導入など、それまでの「掃除」のイメージを「魅せる清掃」に変え、現在では関西空港駅をはじめ関西の主だった駅で活躍している。AZZとは、イタリア語の紺碧を意味する“AZZURRO”からとったもので、清楚な印象とともに、関西国際空港の青空やJR西日本のコーポレートカラーを表している。

 北口の経歴は、 平成13年に阪和線のアルバイト清掃員として採用されたことから始まる。

「清掃なら接客をしたり、あまり人と話すこともないだろうと思って(笑)。どちらかというと、一人で黙々と作業をこなすという、そんなイメージを持ってこの仕事に就きました」と言う北口。だが、実際の清掃の現場では駅の利用者から話しかけられることも多く、またチームとして連携しながら業務を行うなど、入社前の想像とは少し違っていたようだ。

「年配のお客様から、いつもキレイにしてくれてありがとうと言われたり、ほめていただいたり。そんな経験のなかで、人と接することも、だんだん好きになってきました」。
 
イメージ 限られた時間内で、座席をはじめ通路などを清掃する。細部に対するこだわりも大事だが、まずお客様の目線を大事にするよう指導する。
 
仕事を通じた、喜びの連鎖がある
 この仕事は、ただ汚れているところをキレイにするだけではない。人を心地よくしたり、喜ばれたり、自分も成長できる仕事なのだ。そう北口が気づきはじめた頃、それまでの働きが評価された北口は社員として採用された。

「関西空港駅は国内だけでなく、海外からもお客様をお迎えする場所なので、キレイにすることはもちろん、何かを聞かれてもお答えできるよう英語も勉強しました」。

 関西空港駅のAZZクルーは、駅構内をはじめ、駅発着の列車の清掃も行う。たとえば特急「はるか」の場合、6両編成の列車を56名で担当し、わずか数分という限られた時間で清掃を完了させなければならない。列車に遅れが生じた時などは1分で掃除を完了させることもある。

「どんなに時間がなくても、お客様に気持ちよく列車に乗っていただける最低限のことは絶対にします」。その言葉は、確信と自信にあふれている。
清掃とサービスのプロを育みたい
 現在は約30名のクルーを統括するマネージャーとして、クルーたちを指導する立場にある北口。主な業務はこれまでの清掃から、クルーたちの教育、現場の管理へと変わった。

「大事なスタッフとお客様に怪我をさせない。それを第一に考えています」。クルーの業務は清掃に加え、お客様の案内業務もあり、どの車両に乗れば目的駅のエスカレータに近いかなど、時には「えっ!?」と思うようなことを聞かれることもある。それでも決して「ノー」とは言わない。案内は月に3,000件を超えることも。

「あいさつをできなかったスタッフが、仕事を通じてちゃんとあいさつができるようになったり、自分からお客様に声を掛けられるようになった姿を見るのが一番うれしい」。

 AZZクルーではお客様から「ありがとう」と言われた件数をカウントしているが、その数は月に500件にのぼるという。

「夢は、 AZZクルーが清掃業務だけではなくて、ご案内やサービスでもプロとして認めてもらうこと」。世界の玄関口から今日も夢が広がっている。
イメージ
列車の到着前に行われるミーティング。列車運行状況や、クルーの配置を確認する。
イメージ
駅構内全てが持ち場。移動中にも、機器類の汚れやラックの整頓など、こまめにチェック。
イメージ
列車を見送るクルーに感動したお客様の投稿がきっかけで、平成18年、AZZクルーは関西空港エリアで働く全ての人を対象にした「CS(お客様満足)初代グランプリ」を受賞。
イメージ
モットーや行動基準が示された「AZZスピリット」。クルー全員が常に持つことで、仕事の使命感を共有する。
このページのトップへ