Blue Signal
May 2009 vol.124 
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西日本 美味礼讃 イメージ
太市たけのこ 兵庫県姫路市

春を代表する食材、たけのこ。「古事記」に記されるほど、日本では古くから食されてきた。

 姫路駅から姫新線で15分ほどの太市駅周辺は「姿は山城、味は太市」と称されるたけのこの産地で、嘉永年間(1848〜1853年)に親竹として孟宗竹を移植したのが始まりといわれる。収穫は3月下旬から5月中頃で、手入れの行き届いた竹林で早朝に掘る。土壌は鉄分を多く含む粘土質の赤土のため、柔らかくてきめ細かな、アクの少ないたけのこができるという。また、冬期に竹の周囲にまんべんなく土をかぶせる「土入れ」をするため、色白の美しいたけのこが育つそうだ。地表に出たたけのこは変色して品質が落ちるため、頭を出す前のわずかな地割れを頼りに「トンガ」という刃の幅が狭い鍬で丁寧に掘っていく。
収穫されたたけのこは、その日のうちに姫路や加古川、明石の市場に出荷され、太市筍組合でも直売される。地元では掘りたての物を生で刺身にしたり、たけのこの粕煮にして食する。わかめと炊き上げた「若竹煮」は、旬の味覚同士が出会い、春の食卓を彩る。 イメージ
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