Blue Signal
May 2008 vol.118 
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鉄道に生きる【幸  浩司[みゆき こうじ](50)新幹線管理本部 東京指令所 総括指令長】
1日約300本という山陽新幹線の
運行管理・制御を担っている東京指令所。
新幹線の頭脳ともいえる東京指令所では、
それぞれの専門家が日々の安全運行を支えている。
新幹線の安全運行を管理・制御する
世界に誇る新幹線の仕事に
 新大阪〜博多間約560kmにおよぶ山陽新幹線の安全で快適な運行を支えている東京指令所。3系統(旅客、列車、運用)の運輸系指令と、3系統(施設、電力、信号通信)の工務系指令の計6系統で構成され、それぞれが連携して24時間体制で新幹線の管理・制御を行っている。その各指令を統括するのが、総括指令長である幸浩司の役目だ。

 幸は、32年間におよぶ鉄道人生の半分の歳月を、東京指令所で山陽新幹線の安全に力を尽くしてきた。

 「小学校の校外学習でSLに乗ったときから、鉄道に憧れを持つようになりました。そして、高校生になって電車通学を始めて、運転士ってかっこいい仕事だなと思ったのが、国鉄をめざしたきっかけです」と幸。昭和51年に入社し、機関助士を経て目標だった運転士となったのは5年後だった。広島と下関で約10年間乗務後、在来線の指令を経て平成4年に東京指令所に赴任した。

 「いずれは、世界に誇る新幹線の仕事に就きたいと思っていました。在来線の指令員になったときは分からないこともあり苦労も多かったですが、先輩や同僚に支えられながら、指令員として必要なノウハウを見につけることができました」と当時を振り返る。
お客様の立場で指令を
 「世界に誇る新幹線の安全を支えているという喜びと責任の重さは、常に感じています。大切なのはお客様の立場で物事を判断することです。かつて災害による列車の遅れが発生したとき、ただやみくもに運転整理を行っていた私に、“お前は本当にお客様のことを考えているのか?”と叱責してくれた先輩がいます。その時、私は遅れた列車のことだけを考え、定時で運転している列車まで遅らせてしまっていたのです。目の前の事象だけを見るのではなく、山陽新幹線の運行状況全体を把握して、お客様にこれ以上の迷惑をかけないよう努力する。この一言が、私にお客様を強く意識させてくれました」と語る。
正確な判断ができる技術力を磨く
「最大の課題は技術継承」という幸。開業以来、連綿と受け継がれてきた新幹線指令の技術を継承していくことが求められている。

 「判断が最も重要な指令の仕事は、ある意味では勇気のいることですが、誤った判断は絶対に許されません。正確な判断をするために日ごろから、根拠に基づいた判断を行えるよう、いわゆる技術力を養う訓練なども重要です」と言う。

 東京指令所では、あらゆる場面を想定した総合訓練を定期的に行っている。本番さながらの緊迫感漂う訓練から得るものは大きい。

 常に技術を磨き、より高い安全性と快適性を追求している東京指令所。幸は今日も総括指令長としての誇りと責任を胸に、山陽新幹線の安全輸送に全力を注いでいる。
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当日と翌日のダイヤの確認作業も欠かせない。
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6指令の代表者が集まり、現在の状況について情報の交換や確認を行う指令間協議。異常時には早期復旧のため最善策を協議し決定する。
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新幹線の頭脳ともいえる東京指令所
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総合表示盤で現在の運行状況を把握しながら、各地の雨量や風速など、さまざまな情報を常に確認。総合的な視野で列車運行を見守る。
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若手指令員への教育にも力を注ぐ。
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