Blue Signal
January 2008 vol.116 
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鉄道に生きる【古澤  謙二[ふるさわけんじ](49)新幹線管理本部 博多総合車両所
電車センター 車両管理係】
昨年7月、最新・高速・省エネルギーのハイテク車両を
コンセプトに開発された次世代新幹線「N700系」がデビューした。
N700系にはさまざまな先進テクノロジーが搭載されており、
車両の検査修繕における機能についても新しいシステムが搭載された。
今回はそのシステム構築に携わった新幹線車両検修のプロを訪ねた。
新幹線車両の品質を守り磨きつづける
N700系用に新検査システムを開発
 JR東海とJR西日本が共同開発したN700系新幹線は、高速、快適、環境への適合を高度に融合させた先進テクノロジーが随所に搭載された新幹線の最新モデル。JR西日本仕様のN700系には、モニタ全般検査車上検査機能という新しい車両検査システムが導入された。古澤謙二は、このシステム開発を行った車両検修のエキスパートだ。

 「すべての機器を取り外してオーバーホールを行う全般検査を担当しています。ここ10年ほどは、検査品質を向上させるための試験方法を考えたり、システムを開発しています」と古澤。博多総合車両所で新幹線車両の検査ひと筋30年、新幹線の安全を守り続けている。
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N700系モニタ全般検査開発のために作成した動作説明書。
安全を守るプライドを継承する
 新幹線の定期検査には、2日に1度行う「仕業検査」、走行距離が3万kmに達した場合または30日以内に行う「交番検査」、走行距離60万kmまたは18カ月以内に行う「台車検査」、そして走行距離120万kmまたは36カ月以内に行う「全般検査」がある。古澤の担当する全般検査は、車体と機器の細部まで点検し新車さながらの状態にする最も大規模な検査。主回路や制御装置も異なる0系からN700系までのすべての車両について熟知した古澤ら検査のプロによって、徹底的なメンテナンスが実施されている。

 「大切なのは、新幹線の安全を守る検査屋としてのプライドと責任ですね。私たちはお客様の安全と、人生までをもお運びしているわけですからね。安全を支えるのに終わりはないし、ほんの少しでも進歩させることが大切です」と語る古澤は、検査の品質向上のためのシステムの開発や、後進の育成など、常に次を視野に入れている。
新幹線の安全を守りつづける
 「N700系のモニタ全般検査のシステム開発を担当するとわかった時は、まだ実際の車両を見たことがなく、初めて目にする図面だけが頼りという状況でした。それからは寝ても覚めてもN700系のことが頭から離れず、どうしたらより使いやすく安全なものができるかと試行錯誤の連続でした。なんとか期限までにシステムを完成することができ、それが車両に搭載された時は、何ごとにも代えられない喜びと達成感でいっぱいになりました」と古澤。まったく新しいシステムを一から構築する産みの苦しみは筆舌に尽くし難い。

 古澤のシステム開発には、「後輩たちが使いやすいものに」という設計思想もある。「私自身も、先輩たちから“全般検査は検査の最後の砦だ”言われつづけ、責任と自覚を持つことを仕込まれました。世界に誇る新幹線の安全は、こうして先輩たちから引き継いだものです。後輩たちが私を目標にしてくれるような、そんな検査屋でありたい」と、今日も検査品質の向上をめざして、たゆまない努力がつづく。
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運転台に座って機器をチェックする。
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パソコンや図面、各種資料を駆使して新しい検査システムをつくりあげる。
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車両検査では目視検査、打音検査など、熟練の技を必要とする検査も数多くある。
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N700系
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