Blue Signal
November 2007 vol.115 
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探訪 鉄道遺産
探訪 鉄道遺産 日本の鉄道技術発展の大いなる礎。 旧逢坂山ずい道東口(大津市)
旧逢坂山ずい道は、初めて日本人技術者のみで造ったトンネルである。京都と大津を結ぶこのトンネルは、1年8カ月の歳月をかけて1880(明治13)年6月に完成した。

この頃の鉄道建設は、外国人技師に頼っていたが、京都〜大津間を結ぶ鉄道建設にあたり、当時の鉄道局長官であった井上勝は日本人だけで工事を行うという方針を立てた。この区間は起伏の激しい山岳地帯で、外国人技師たちからは「日本人だけでは不可能だ」との声が上がったが、井上が設立した「工技生養成所」出身の若い技術者を施工責任者に起用した。掘削工事には工部省直轄の生野銀山からベテラン坑員が招かれ、イギリスから購入した削岩機とともに、坑員たちのツルハシやクワを使った手掘り工法も大きな力となり、全長約664mの旧逢坂山ずい道は日本人だけで掘り抜かれた。

この工事の成功により、鉄道創業からわずか10年で日本は鉄道技術の自立の第一歩を踏み出したのである。旧逢坂山ずい道は、1921(大正10)年8月に線路変更によって廃線となり、その役割を終えたが、日本の鉄道技術発展の大きな礎として今も静かに佇んでいる。

【アクセス】琵琶湖線「大津駅」より徒歩約10分
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