Blue Signal
July 2007 vol.113 
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鉄道に生きる【中島 清美[なかしま きよみ](51)広島支社 広島電気区 変電グループ 係長】
鉄道の運行になくてはならない電気。電化区間の車両の運行はもちろん、
非電化区間においても、信号や駅の設備などは電気が担っている。
電力会社から供給される電気を、鉄道用に最適な形態に変換するとともに、
保全を行うのが変電の仕事だ。そのプロを訪ねた。
変電一筋の経験と実績が鉄道の安全を支える
鉄道設備用の電力をつくる
鉄道設備における電気を担当する部署として、広島電気区には、電車線、信号通信、そして変電という3つのグループがある。

電車線グループでは、電車に直接電気を供給する架線と、駅施設の電灯などを担当する。信号通信グループは、その名の通り信号や通信などに関わる電気部門を担当する。変電グループは、電力会社から供給される電気を鉄道に最適な形態にして各施設に送る業務を担当している。つまり、この変電グループが、すべての電気関連の業務の大元を担っているということになる。

中島清美は、そんな変電の業務ひと筋に33年のキャリアをもつ、変電のエキスパートだ。

「山口県の小郡で生まれ、父も蒸気機関車の機関士をしていたものですから、小さい頃からずっと機関車を見て育ち、列車の運転士になるのが夢でした。でも、電気を送る仕事に就いても、同じようにお客様を運ぶための仕事を担っているんですね」と語る中島。変電設備の工事や保全、関係する外注業務の監督など、業務の内容も幅広い。
工事と保全の両輪で電気の信頼を高める
「鉄道において、電気というのはあって当たり前、電車も動いて当たり前なんですね。この当たり前という状況を維持し続けるのが私たちの仕事ですから、責任は重大です」と中島。変電所の設備は常に安全に機能することが求められ、電気の供給が止まるのはもってのほかだが、過剰に流れてもいけない。配電盤や電力管理のシステムの事故を未然に防ぐとともに、万が一の不備の際には被害を最小限に食い止め、トラブルが拡大することを防ぐのも大切な役目となる。

「電気は目には見えませんからね。日頃からの点検や修理といった保全が欠かせません。電力設備を作ったり改良したりする工事部門と、保全部門の両輪がきちんと機能して初めて、電気設備の仕事が成り立つと言えるでしょう。また、変電グループだけでなく、電車線、信号通信の各グループとの情報交換、コミュニケーションも大切です」と中島は語る。
設備の状況を常に監視する万全の体制
広島電気区には、現在20の変電所と、それを司る指令所がある。年に最低1度は各施設の検査を行うが、検査は1つひとつの変電所ごとに行うのではなく、検査項目ごとに実施するという。

「例えばAの項目の検査を4月に行う、Bは5月に行うとしますよね。そうすれば、検査項目ごとに定期的に20カ所の変電所を訪れることができますからね。常に設備の状態を監視することができます。昔は配電盤のちょっとした音と熱と臭いによって状態を判断したものですが、現在は新技術やコンピュータを使って保全の精度を高めています」と語る中島。事故復旧訓練として、現場でトラブルのシミュレーションを実施し、社員の技術向上を図るとともに、技術力の継承を行うなど、人材育成にも情熱を注いでいる。
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図面のチェックを行いながら、電力指令所と専用回線で状況確認を行う。
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変電所内で電力の監視操作盤を確認する。
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負荷電流の確認のために記録紙を読む。
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配電盤の回路の調査。テスターや検査装置を使って行う。
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所員との綿密な打ち合わせ。
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