Blue Signal
March 2007 vol.111 
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うたびとの歳時記
鉄道に生きる
花に会う緑を巡る
鉄道に生きる【樫山 正樹[かしやま まさき](30)和歌山列車区 運転士】
イベント列車や団体の貸し切り列車など、
展望車両やお座敷列車などを牽引するときに
なくてはならないのがディーゼル機関車。
このディーゼル機関車の運転士の若きリーダーを訪ねた。
機関車の運転に若いエネルギーを注ぐ
臨時列車として走る機関車
「小さい頃から電車が好きだった」そう語る樫山正樹は、1995(平成7)年に入社し、駅業務を1年、車掌業務を1年経験した後は運転士として活躍し、すでに10年のキャリアを持つ。そして、和歌山列車区に約120名いる運転士のうち、わずか7名というディーゼル機関車の運転士の資格を持つ1人だ。

和歌山列車区の乗務区間は電化区間であるため、ディーゼル機関車の定期運行は行っていない。しかし、イベント列車やレール運搬などの臨時列車としての運行が不定期に行われるため、ディーゼル機関士の存在は不可欠で、貴重な存在でもある。

和歌山列車区のイベント列車として代表的なものは、1999(平成11)年の南紀熊野体験博の際に仕立てられ、以来夏の土日祝日の運行で好評を博している、きのくにシーサイド号だ。天王寺〜白浜間を約3時間40分かけ、ゆったりと走る。
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きのくにシーサイド号。「切目〜南部の海景が素晴らしいですよ」と樫山。
向上心の表れが機関士の免許取得
「日常業務では電車の運転を行っていますが、ディーゼル機関車に乗務したときは、エンジンの音や振動を身体で感じ、自分が運転していると実感します。ここがディーゼル機関車の運転士としての醍醐味です」と樫山。ブレーキの操作ひとつをとっても、ディーゼルの場合は減圧をしながらゆっくり行うため、電車とは扱いが異なる。

樫山がディーゼル機関士の免許を取得したのは2001(平成13)年。何か人と違うことをしてみたい、自分を高めたいという樫山の思いと、和歌山列車区が新たなディーゼル機関士を必要としているというタイミングが一致した。

吹田で3カ月の机上訓練を行った後、実技訓練として岡山運転区で気動車を3カ月、米子運転所で機関車を2カ月弱訓練し、晴れて機関士となった。和歌山列車区に戻ってからは、ベテランの先輩機関士と若手の運転士を結ぶパイプとして、また若い世代のリーダーとして活躍している。
勉強会でスキルアップを図る
「電車にせよ、機関車・気動車にせよ、お客様を目的地まで安全・快適にお運びするという点では同じです。イベント列車などの臨時列車の場合は、列車に乗る事そのものを目的にされるお客様や、鉄道ファンも多いので、楽しんでご乗車いただき、“またこんな列車に乗ってみたい”と思っていただければ嬉しいですね」自らも鉄道ファンであり、運転することが好きだという樫山は、安全と快適へのこだわりも人一倍だ。

若手運転士を集め、トラブル対処法などテーマを決めての勉強会を毎月主宰しているのも、そんな彼のこだわりのひとつだといえる。

「ディーゼル機関車の乗務員室には冷房もなく、ただでさえエンジンの熱が伝わってくるのに、夏のイベント列車の運行時は暑くてたまりません。でも、お客様が“こんなに暑いのに、ご苦労さまです”と声をかけてくださることもあるんです。このときの喜びは格別ですよ」と樫山。運転士の仕事が、本当に性に合っているようだ。
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乗務に際しての注意点や確認事項を書き込んだ「動力車乗務表」を提出して乗務点呼を受ける。運転台に設置する懐中時計の時刻合わせも大切な業務。
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乗務前のエンジンの点検も念入りに。
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停車駅の発車・到着時刻が表示された時刻表を運転台にセットする。
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右手はブレーキ、左手はノッチ(自動車でいうアクセル)を握り前方をしっかり見つめ走行する。DE10型の運転台は、進行方向に垂直に設置されているのが特長だ。
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乗務を終えて機関車を降りる。「今日も無事故で乗務を終えられた」ホッとするひととき。
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