Blue Signal
November 2006 vol.109 
特集
駅の風景
出会いの旅
うたびとの歳時記
鉄道に生きる
花に会う緑を巡る
鉄道に生きる【早越 宏[はやこし ひろし](51)大阪工事事務所 大阪信号工事所 所長】
信号は列車を安全・正確かつ
円滑に運行するために欠かせない設備。
その信号をつくるエキスパートを訪ねた。
大きく、厳しい目線で信号を見守る
大きな目線で全体を見つめる
大阪支社、神戸支社を中心とした信号工事を担当する大阪信号工事所。その所長である早越宏は、信号一筋に歩んできた信号のエキスパートだ。

「多くの人は保全を経験後に工事所に配属という形をとるのですが、私は入社以来29年間、信号工事の仕事に携わってきました」。数多くの信号の設計や設置工事を行ってきたが、現在は、副所長、助役とともに、建設プロジェクトのチェックや指導、他部署や支社との折衝など、総責任者としての役割を担っている。

「設計の工程の途中で何かあったときにバックアップするようにしています。ひとつ間違えればトラブルになりますから。『裏を見る』というのですが、一見うまくいってるようでも違った角度から広い視野で設計を見ると、電気が走らないことや、細かいところに注意を払いすぎて、全体的に見ると上手く作動しない場合もあるので、設計段階から何度もチェックします」と、早越は大きな目線で安全に常に気を配っている。
何度もテストを繰り返す切り換え作業
現在、大阪駅改良工事・新北ビル建設に伴う信号切り換えというビッグプロジェクトが進んでいる。ホームをひとつずつ南に移すため、線路の位置や形、信号の位置も変えなければならない。変更により並行して列車が走れない場所があれば、信号を制御する必要があるほか、連動装置なども切り換えなければならない。これらの切り換え作業は列車が走らない深夜のわずかな時間で行われる。

「切り換え作業は一晩のうちに行います。作業時間はおよそ4時間。そのうち、1時間で信号を切り換え、残りの3時間は切り換えた信号が正常に作動するかをチェックするのです」。作業は一晩だが、事前に3カ月前から模擬で試験を行う。そのためシステム上で列車が運行している状態を作り、何度もテストを重ねて万全の体制を敷く。

「3カ月前から週に二晩を使って、システムが正常に作動するか確認します。信号だけではなく保線や電力など他の工事との兼ね合いや、運行管理との調整もありますし、どうしても設計時の想定と違ってくることもあります。けれども、そこをどう解決していくかというところに、この仕事の面白さがあります」と早越は語る。
技術継承への熱き思い
平均年齢が34歳と若く、20代の社員も多い大阪信号工事所では、若手への技術継承が急務となっている。

「私があれこれ言うのではなく、彼らにはなるべく自分自身で考えることを覚えてほしいと思っています」と早越。若手社員が失敗しないように要所で確認し、指導する。助けを出すときも『こうしろ』ではなく、『こういう方法はどうか』とヒントを出すなど、自分で考えながら多くのことを吸収してほしいとの思いがある。

「若手には仕事に何か面白みを感じてほしいと思います。ただ与えられた仕事をこなすだけでは成長できませんから。19年度に実施する大阪外環状線の新設工事のプロジェクトも進行していますが、『完璧な設備を作った』という達成感を持てるような仕事をしてほしい。さらに当然のことですが、レール周りに次いで信号や踏切は安全を司る重要なポイントですから、事故がないように安全には絶対の思いで取り組んでもらいたいです」と語る目は、後輩たちへの熱い思いで輝いていた。
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作成された連動図表をチェックし、修正ポイントを指導する。この作業を何度も重ねることで完璧な信号が作られる。
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切り換え作業当日までは、信号機器室でシステムが正常に作動するかテストを重ねる。
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信号切り換え前のテスト時には、信号機設置の現場とやり取りをしながら、信号機器室で電圧が正常か確認する。
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若手社員とともに大阪駅構内の信号機の点検へと向かう。
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鉄道の安全は、厳しいチェックをパスしてきた信号機によって守られている。
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