Blue Signal
January 2005 vol.99 
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鉄道に生きる【上川 正仁[うえかわ まさひと](44)神戸支社 神戸新幹線電気区 係長】
時速300kmで走行する新幹線に、
安全かつ確実に電力を供給するという使命。
世界一の高速輸送を支える「電車線」のプロを訪ねた。
新幹線の安全は俺たちが守る
始発までの5時間が保守管理の勝負
1975(昭和50)年に博多まで全線開通してから30周年を迎える山陽新幹線。新大阪〜博多間644kmを結ぶ大動脈で、5,700万人もの輸送実績を誇る(平成15年度実績)。最高時速300kmというこのスーパー・エクスプレスが安全・快適に運行されるためには、さまざまな部署の数多くのプロの目が光っている。神戸新幹線電気区の上川正仁もその一人。電車線の保守管理を担っている。

「電車線というのは、新幹線に電力を供給するための架線に関する部分のことです。私たちが担当するのは、神戸市の長坂トンネルから西方の25km区間。MW(メンテナンス・ワゴン)という電気保全車に乗ってチェックを行いますが、当然のことながら新幹線の運行が終わってから翌日の始発までの間、つまり夜中の作業ということになります」と上川。

新幹線に電力を供給する電車線は、パンタグラフを経由して電気を流す「トロリ線」、そのトロリ線を線路と水平に保つための「ちょう架線」と「ハンガー」、それらを支える「架線柱」などのパーツで構成され、そのすべての設備の点検・保守をするのが上川たちの仕事となる。
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チームワークが高める作業精度
電気部門の保守管理は電気設備保全指針によって作業項目や手順が定められている。

「検査項目は大別すると60項目くらいですが、各項目ごとに細かく規定されていますので数えきれないほどの検査を行っています。MWには作業責任者、運転者、作業員2人の4人のチームで乗り込んで作業を行いますが、一番大切なのは4人のチームワークですね」と話す上川は、チームでの作業を円滑に進めるために、日頃からスタッフたちとのコミュニケーションを高めることを心がけている。

「普段からいろいろな話をしてスタッフの性格を知っておくことも大切です。個人の能力を判断することで作業の精度も上がりますから。だから若手社員たちともメール交換したりしてね(笑)」と、笑顔の裏にはマニュアルでは規定できない作業精度のアップを願う熱い思いがある。
経験と技術が異常サインを読み取る
「保守点検を担当する人間にとって一番大切なのは、“この設備は俺が守ってるんや!”という気概だと思います。電車線には何百何千という同じ部品があり、一般の方が見たら何の区別もつかないでしょう。私たちが巡視をしていても、ただ漫然と眺めていたのでは異常のサインを見落としてしまいます。気概をもって注意深く眺めて初めてサインに気付くというわけですね」と話すように、安全管理には担当するスタッフの経験と技術に負う部分も多々あり、研修や訓練が欠かせない。神戸新幹線電気区では技能訓練を毎月行い、個人の能力アップを図っている。

「若手社員に保守の技術を継承していくことが、これからの私の課題ですね。鉄道の安全はそれぞれの持ち場のプロによって成り立っていますので、私たちは電車線のプロとして胸を張れるようにならなければいけません。またそうなることが鉄道の仕事に関わっている魅力ですよ」と語る上川。電車線のプロとしてのこの気概が、世界一の安全を誇る新幹線を支える要素になっていることは間違いないだろう。
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訓練用架線を使った電気保全車MW(メンテナンス・ワゴン)での作業訓練。
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10日ごとに走行し軌道上のチェックを行う電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」のデータを分析するのも大切な業務のひとつ。
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「身体で覚えて自分で判断できることが大切」と若手スタッフへの指導を行う。
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ハシゴをかけて電車線をチェックする訓練。新幹線ではめったにハシゴを使っての作業は行われないが、個々の能力アップのためには欠かせない訓練だ。
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